§第8章§
03
「どういう事だよ!すぐそこまで来てるってよ!」

「いーやん別に。素敵な悲鳴聞けるやん、きゃははははっ!」

報告を受けた美瑠は苛立ったように告げるが、楓子は無邪気に笑いながら人質となっている2人に目を向けた。

「それが咲良さんの実力なんだよ!」

「お前ら、舐めすぎ。」

計画が思い通りにいかなかった事が嬉しかったのか、真子と南那は椅子に拘束されながらも笑みを浮かべる。

「ごめんなぁ、気付かへんくて。……まだ喋れるなんてなぁ!」

「きゃははははははっ!もっと聞かせてよっ、きゃははははははっ!」

その発言によって怒りが増幅したのか美瑠が八つ当たりするように真子を殴ると、それに続けて楓子も南那へと拳を振り下ろした。

「そろそろか?」

「私達も準備しなあかんな?きゃははっ。」

殴ることによって大人しくなった2人を見下ろしてから、楓子と美瑠の2人は倉庫の入口付近に身を隠す。

「お前達。」

「咲良さん……」

「来ちゃ……駄目……」

倉庫に姿を現した咲良は目に入った2人を呼ぶが、南那と真子は彼女に警戒するよう伝えた。

「おらぁ!」

咲良に向かって美瑠が木材を振り下ろすが、咄嗟に間に入った隆治が腕で防いだ。

「ぐっ……痛たた……」

「橘先輩!」

「橘さん……何で……」

腕から流血した隆治を見て真子は悲痛な声を上げ、咲良は驚きながらも彼に問い掛ける。

「きゃははははっ!いつまでよそ見してんねん!」

殴り掛かってくる楓子を咲良はいなしてから、次いで木材を振り下ろした美瑠の手から木材を蹴り落とすとそれを拾って2つに折った。

「へぇ……やるやん。」

「いつまでもつか楽しみやなぁ!きゃははははははっ!」

咲良が楓子の攻撃を防いだ隙に美瑠は蹴りをいれようとするが、再び間に入った隆治がその蹴りをいなす。

「お前、邪魔すんなや!」

隆治に向かって放たれた拳を今度は咲良が受け止めると、楓子を美瑠に向かって押し飛ばした。

「 橘さん、あの2人を頼みます。こいつらは……私がやります。」

「そっか……分かった。」

にらみ合いが暫く続いていたが咲良から依頼を受けると、隆治は小さく頷いて拘束されている真子と南那の元へと向かう。

「行かせね……」

「お前の相手は私だ。」

背中を向ける隆治へと美瑠は飛びかかろうとするが、咲良が割って入ると拳によるカウンターを決めた。

「どうして私を狙う?」

「私らは強いと噂のお前をいたぶりたいだけや!」

「アンタの断末魔が聞ければそれでええねん!きゃははははっ!」

縄を解く隆治を背負う形で彼女が2人に問い掛けると、しびれを切らした美瑠と楓子は同時に咲良へと飛び掛かる。

「そんな為に2人を……」

「舎弟がやられて、怒ってるん?」

「舎弟じゃない……でも傷付けたお前らを許さない!」

同時に襲い掛かられながらも2人をいなして距離を取った咲良は、怒ったように声を上げた。

「咲良さん……」

「ふふ、良い先輩だね。」

感動の余りに言葉をもらした真子と南那に、隆治は優しい声色で良いながら解く作業を進める。

「髪が真っ白になるほど恐怖と……」

「何にも見えなくなるほどの真っ黒の絶望……」

咲良と間を開けている美瑠は睨みながら、楓子は不適な笑みを浮かべながら口を開いた。

「どっちが良い!」

声を揃えて叫ぶと再び2人は同時に咲良へと殴り掛かるが、彼女は1つ1つの攻撃を防ぎながらその直後に反撃を行っていく。

「なんで、鳴かへんねん!」

「聞かせろ……悲鳴を……断末魔上げろや!」

苛立ったように2人は声を上げるが、大振りになった攻撃をかわした咲良はそれぞれの腹部に拳を放った。
楓子は腹部を押さえながら膝を着いていたが、美瑠はばたりと倒れ込む。

「咲良さん、余裕だな!」

「そりゃこんな奴等に遅れを取るかよ!」

「宮脇さんは本当に強いからね。……はい、これで大丈夫。」

興奮した様子で2人が告げた後に縄をほどいた隆治が2人に告げると真子は隆治に顔を向けようとするが、南那が顔を無理矢理咲良の方へと向けた。
横たわる相手に咲良は近付いていくが、咄嗟に身を起こした美瑠によって目元へとスプレーを放たれる。

「咲良さん!」

「てめぇら、きたねぇぞ!」

2人は咲良の加勢に出ようとするが、先程の言葉が頭を過ったのか隆治は2人の行動を手で制した。

「調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

「悲鳴聞かせてや!きゃははははっ!」

視野を奪われて動きが鈍くなった咲良に、楓子と美瑠は一方的に攻撃を加えていく。

「咲良さん!8時と4時!」

隆治から止められてもどかしそうな表情を浮かべていた南那が我慢出来ずに声を上げると、咲良は攻撃の当たる寸前のところでそれをかわした。

「あっ……チーム咲良のフォーメーション!」

「まぐれやろっ!」

「4時、10時!」

真子がピンと来たように告げた後に美瑠と楓子は再び咲良を狙うが、告げられた声を頼りに再度攻撃を避ける。

「お前らも少し黙って……」

助言を与えている事に気付いた美瑠が狙いを変えて真子を殴ろうとするが、その拳を隆治が止める。

「宮脇さん、ちょっと今のままじゃ不利だよ。目を何とかしなきゃ。」

「手出ししないで下さい。これは……」

「大丈夫、宮脇さんがやらなきゃいけないのは分かってるから。……真子ちゃん、南那ちゃん。宮脇さんをお願い。」

美瑠を楓子の元へと押し返すようにしてから隆治は告げるが、咲良は否定しようとした。
しかし彼は咲良にハンカチを手渡すようにしてから、真子と南那を手招きして呼び寄せる。

「宮脇さんの視界が戻るまで、ちょっとしたエキシビジョンをさせて貰うだけ……あれ?グローブが……」

2人が咲良を後退させるのを見届けながら、隆治は説明するように告げた。
その後隆治はポケットからグローブを取り出そうとするが、焦った様子でポケットを探り始める。

「それやったら……」

「お前から先に悲鳴聞かせて貰うわ!」

隙だらけになっている隆治を見て楓子と美瑠は顔を見合わせたが、やがて叫ぶように言うと隆治に飛び掛かった。

■筆者メッセージ
ここから、初めてのお話でしょうか。
こらるめんて ( 2015/11/09(月) 00:05 )