§第7章§
02
「咲良さん、この間は本っ当にありがとうございました!」

「先に帰るのに、お金は払ってくれたんだもんなぁ……」

マジックとの決戦を終えた後日、真子と南那は嬉しそうに告げながら前を歩く相手に着いていった。

「借りは作りたくない、それだけだ。」

後ろを着いてくる2人に見向きもせず、咲良は前に足を進めながら返事をする。

「じゃあ咲良さん!そろそろ舎弟に……」

「お前達が勝手に着いてきてる……それだけだろう。」

「そんなぁ。」

南那が思い切って告げた言葉にも咲良は淡々と返事をするが、2人はどこか嬉しそうな反応を見せた。

「咲良……」

「マジック!」

「今度は何しに来やがった!」

突然前に姿を現したゆりあを見て真子と南那は警戒するように咲良の前に出るが、咲良はすぐに2人を退けてゆりあの前に立つ。

「何の用ですか。」

「少し話に来ただけだ。……悪いか?」

咲良は真っ直ぐに相手を見ながら淡々と問いかけるが、ゆりあはどこかばつの悪そうに尋ね返した。

「分かった。」

「咲良さん!」

「心配ならお前達も来れば良い。」

簡単に承諾をした咲良を心配してか、真子と南那は同時に相手の名前を呼ぶ。
それを聞いたゆりあが2人にも声を掛けてから足を進めると、3人は口を閉ざしたまま先導する相手に続いた。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

「用件は何ですか?」

「咲良……何故私に勝った?」

「そんな当たり前の事……!」

「カミソリ!」

再び尋ねる咲良へと尋ね返したゆりあの問いに真子は苛立ちの声を上げようとするが、南那がそれを制する。

「私はてっぺんを目指す。その為に戦い、勝った。……それだけだ。」

「それだけ……か。」

完全に言いきった咲良の言葉を受けて、ゆりあは視線を下げて相手の言葉を繰り返した。

「橘隆治についてはどう考えてる?」

「橘さん……?」

ゆりあが名前を挙げるが、咲良はぴんと来ない様子で眉を潜めながら彼の名前を繰り返す。

「お前なんかじゃ駄目だ、私が守らなきゃいけない……そう考えてた。……考え違いだったみたい。」

「今も間違えている。」

自嘲するようにゆりあは言葉を続けていったが、咲良は声のトーンを変える事無く否定をした。

「どんな風に間違えてるってんだよ?」

「橘さんは……誰にも守られる必要は無い。」

即座に考えを否定された事にゆりあは苛立った様子で問いを重ねるが、咲良は淡々と言葉を返した。

「守られる必要が無い?だいたいこの学園の男子は……」

「自分で自分の身を守るのは当然の事だ。……私は何も関係無い。」

ゆりあの主張を最後まで聞かずに咲良は話題を断ち切ると、踵を返して美術室を後にする。

「もしかしてマジックって……」

「しっ!今は黙っとけって……」

ひそひそと話ながら咲良の後に続いた真子と南那を見送ってから、ゆりあは強く拳を握り締めた。

こらるめんて ( 2015/11/05(木) 14:03 )