§第6章§
04
「あなたは……どうしててっぺんを狙う?」

「てっぺんからの景色を見るためだ。」

会話を行っている2人のやり取りが聞こえた為に、隆治は背中を壁につけるようにしながら耳を傾ける。

「退屈だよ……とっても。達成感もなにもない…… 空虚さがあるだけ。」

「それでもいい、見上げるのは嫌なの。 ……首が痛い。」

彼女の言葉を聞いて遥香は淡々とそれに答えるが、気圧される事無く咲良も言葉を続けた。

「ふっ……早くおいで。」

「ああ。必ずあんたのとこまで辿りついてやる。」

「期待してる、咲良。」

余裕そうに笑みを浮かべて告げる相手を咲良は睨み付けながら宣言するが、遥香は全く気にしていない様子で彼女に背中を向けると歩き始める。

「静かに……っと!」

壁から出ようとしたものの、遥香がこちらに向かってくるのが見えた為に隆治は壁ぎりぎりまで身体を寄せた。
遥香が壁を曲がり隆治の前を通り過ぎるが、彼が小さく胸を撫で下ろした瞬間に彼女は足を止めた。

「関心しないな……盗み聞きは。」

「えっと……こんにちは、ソルトさん……」

小さく笑みを浮かべながら告げる遥香に、隆治は困ったように苦笑いを浮かべると壁に身を寄せたまま挨拶を行う。

「私は……咲良には期待しているんだ。」

「……そのようですね。」

彼に向けていた顔を背けて遥香が言葉を続けると、隆治はようやく壁から離れて言葉を返した。

「あなたにも期待してる。……咲良を強くしてくれる事に。」

「僕に?辞めて下さいよ!僕にそんな実力……!」

告げられた内容に隆治は恐る恐る反論しようとするが、その直後遥香から唐突に繰り出されたフックを彼は反射的にかわす。

「実力不足?……面白い事言うね。」

「これは……えっと……」

「理由は何でも良い。……咲良を頼むよ。」

にやりと笑って告げる相手に隆治は言い訳をしようとするが、遥香はそれを聞かないままその場を後にした。
隆治は小さく息を吐いてから咲良の元へと行こうとするが、何者かに肩を掴まれる。

「っと……南那ちゃん?」

「気安く呼ぶな。……何1人で咲良さんの所に行こうしてんだよ。」

「ゾンビ!お前も橘先輩にべたべた触るなっての。」

振り向いた先に居た南那は彼の肩を掴んだまま苛立った様子で告げると、真子もまた不機嫌そうに言いながら南那の手を隆治から離れさせた。

「とりあえず、怪我が心配だから行こう。」

不穏な空気になりつつある2人に声を掛けると、真子と南那は頷いて咲良の元へと駆けていく。

「咲良さん!」

「咲良さん、怪我は無いですか!?」

「お前ら……橘さん。」

「橘さん!?」

心配する声を聞いた咲良は2人に目を向けて呟くが、遅れて現れた隆治の姿を見て名前を呼んだ。
それに驚いた真子と南那は目を丸くしながら声を重ねて咲良と同じように隆治の名前を呼ぶ。

「今まで先輩に……ごめんなさい。」

「あ……ううん。良いんだ、気にしないで。」

「今回は……ありがとうございました。けど……助けはいらないので。」

突然の謝罪に隆治は手を振りながら答えるが、続けて咲良は礼を述べると頭を下げてからその場を離れていった。

「待ってくださいよ、咲良さん!」

すぐに南那は彼女の名前を呼びながら後を追うが、真子は困惑の眼差しを隆治に向けてから2人の後を追い掛ける。

「宮脇咲良……気に入らないな、あいつ。」

■筆者メッセージ
マジすか5、どうしようかな……
本気で悩む……
こらるめんて ( 2015/10/30(金) 23:03 )