§第6章§
03
「宮脇さん、大丈夫?」

「橘先輩!」

裏庭の様子が見える場所に訪れた隆治へと、先に戦いを見ていた真子が彼へと声を掛ける。

「もう大丈夫なんですか?」

「うん、僕はね。それで……」

「駄目だ、バカモノが覚醒しちまった。」

心配する真子に返事をしてから再度尋ねようとすると、1年生コンビと共に様子を見ていたチーム火鍋の中から朱里が答えた。

「おい!まだ分かんないだろ!」

「殴られて吹っ飛ばされてんだぞ!不利なのは変わんねぇよ。」

「お前ら仲違いしてる場合か!……ちょっとは黙って見てろよ。」

言い争うようにしていた南那と涼花を美音が制すると、2人は不満そうながらも口を閉ざして咲良の戦いに視線を戻す。
その直後、李奈の拳が直撃した咲良は後方へと吹き飛ばされた。

「ひゃはははっ、あたしの勝ちだ!」

「そんな……」

「嘘だ!」

「立って下さい、咲良さん!」

倒れ込んだ咲良を見て李奈は勝ち誇ったように笑い、様子を見ていたメンバーからは悲痛な声が上がる。

「……まだ、終わってない……」

「咲良っ!」

「頑張って下さい、咲良さん!」

その後ゆっくりと咲良が立ち上がりながら告げると、悲痛な声を上げていたメンバーから再び歓声が上がった。

「ははっ、そのまま寝てりゃあ済んだのに。」

「……言っただろ……私は逃げたことは一度もない……アンタを倒して、前に進む……」

「やってみろっ!」

小馬鹿にしたような発言に咲良は息を整えるようにしながらも返答をすると、李奈は気に入らない様子で再び咲良に拳を放つ。
咲良は拳を握りしめると、相手の攻撃を避ける事無く自らに拳が入るのとほぼ同じタイミングで李奈の頬を殴り付けた。

「バカモノのパンチを……」

「ノーガードで殴り返しやがった!」

お互いの攻撃で吹き飛んだのを見て、様子を見ていた玲奈と奈月は興奮したように声を上げる。

「てめぇ馬鹿かよ!私の拳をまともに受けるなんてっ!」

「逃げることは負けること。だから私は逃げない。」

李奈が立ち上がるようにしながら言うと、咲良もまた立ち上がるようにしてかは彼女の言葉に答えた。

「逃げねえだと?舐めんじゃねぇよ、咲良ぁ!」

「今分かった……勝つ為に殴られる事だってあるんですね……橘さん。」

再度咲良は李奈からの攻撃を防ぐ事無く受けると、痛みに耐えながらも小さな声で呟く。

「これが……あたしのマジなんだよっ!」

深く息を吸ってから咲良は声を上げると、攻撃によって無防備になった李奈へとアッパーを決めた。

「私が……負けるなんて……うそだろうが……」

アッパーがクリーンヒットした李奈は、ふらふらと後退しながら呟いた後地面に倒れ込む。

「咲良が勝ったぁ!」

「信じてましたよ、咲良さん!」

「やばい、咲良さん格好良すぎるぜ!」

咲良の勝利が嬉しかった為に火鍋のメンバーがハイタッチを交わす中、真子と南那は立っている咲良へと声を掛けた。
そんな中、咲良へと近付く影に気付いた隆治は窓に顔を近付ける。

「あれは……ソルト……?」

姿をしっかりと捉えた隆治は、小さな声で呟くようにしてから教室を飛び出した。

こらるめんて ( 2015/10/30(金) 08:11 )