§第5章§
07
「何者だよ……お前……」

「こんな事、が……」

1人の相手に倒された数十人の人物は、各々が口々に今起こった事を否定するように呟きながら気を失っていく。

「えーっと、君がリーダーだよね?」

「ゴホッ……ゴホッ……」

唯一気を失わせる事無く横たわらせていた人物を、光はにこやかに告げながら立ち上がらせた。

「誰に頼まれたのかな?ほら、前も狙われた経験あるからそろそろ挨拶に行かなきゃ。」

「教えるわけ……ねーだろ……ゴホッ……」

数十人の相手に囲まれていた時から変わる事の無い余裕のある様子で彼は尋ねるが、立たされている彼女は必死に呼吸を整えようとしながらも答えることを拒否する。

「あははっ、そっか。」

彼女の反応に笑っていた光であったが直後に彼女の首へと手刀を入れると、その人物は完全に意識を失い床へと倒れ込んだ。

「さて、と。帰ろっかな。」

「ふーん、やっぱりホンマは強いんやね。」

横たわる数多くの人物を見渡してから彼は帰ろうとするが、その彼の背中へと声が届く。
振り返った先に立っている人物を見て、光の口角が再び上へと上がった。

「あれ?美優紀ちゃん?」

「まぁ、この際やから何でウチの名前知ってるかは気にせんでおくわ。ふふっ、あの時も君がみんな倒したんやね。」

美優紀は名前を呼ばれたのを気にする事無く笑いながら、様子を伺う為に登っていたキャットウォークから降りて彼の正面へと立つ。

「ああ、あの時も差出人は美優紀ちゃんだったのかぁ。賑やかな歓迎ありがと。」

「なんやろ……何となく分かる……多分、こうやってお話してるのは時間の無駄やんな?」

にこりと笑いながら告げる彼の言葉で察したのか、美優紀は悪戯っぽく笑いながら返事をした。

「なんでそんな強いん?馬路須加学園の男の子はみんなヘタレなはずやけど。」

「それはねー……秘密、って事じゃ駄目?」

比較的に穏やかな口調で彼へと質問をすると、光ははぐらかすように尋ね返す。

「ふふっ、あかん。」

「そっかぁ。じゃあ、咲良ちゃんのお話するから見逃して貰うってのはどうかな?」

先程よりも楽しそうに笑いながら美優紀が即座に否定をすると、彼はわざとらしく考える仕草を取りながら言葉を続けた。

「アンタ、本当にお利口さんなんやな?」

「女の子の要求を察してあげてこそ出来る男だからね。」

単刀直入に告げられた内容に美優紀は一瞬驚くが、すぐに平穏を取り戻して挑戦的に告げる。
優位に立てた事に満足したのか、光は彼女にウインクを飛ばしながら答えた。

「じゃあ、咲良ちゃんの弱点を教えてあげれば良いのかな?」

「そんなんやったら、もっとデリカシーのある言い方して貰いんやけど。」

「あはは、ごめんごめん。」

彼の言い方へと美優紀は意地悪に言い返すと、光はくすくすと笑いながらも謝罪した。

「咲良ちゃんの弱点は動きだよ。」

「動き?」

さらりと述べられた咲良の弱点であったが意味が分からない為か、美優紀は首を傾げながら繰り返す。

「よく見てたら攻撃パターン、予備動作が分かっちゃう。」

「ふーん……なるほどな。ありがと、約束は守ったるわ。」

説明を受けて納得したように頷くと、彼女はひらひらと手を振りながら倉庫の出口へと足を進めていった。

「聞くだけ無駄かもしれないけどさ、それ知ってどうするの?」

去り際の美優紀へと尋ねると、彼女は足を止めて光の方向へと振り返る。

「マジすか学園とジャブジャブするのに、転校生さんがちょっと邪魔やねん。」

「そっかぁ……なるほどね。」

「ふふっ。ジャブジャブする時、アンタだけは見逃したるわ。」

悪戯に笑いながら告げる美優紀を見送った後、彼もまたどこか自信ありげに笑みを浮かべた。

こらるめんて ( 2015/10/26(月) 08:42 )