§第5章§
06
「ちょっと……引っ付き過ぎな……」

「良いじゃないですかぁ。誰かが見てる訳じゃないんですから。」

自らの腕へと腕を絡ませてくる相手に隆治は注意しようとするが、真子は悪戯っぽく笑いながら絡める腕に力を加えていく。

「藤宮……先輩も、きっとどっちか選ぶだろうし。ゾンビだろうなぁー……」

「いや、それは光の問題であって……」

想像を膨らませている真子へと反論をしようとした、次の瞬間だった。

「あ……」

「えっ……?」

ほぼ同時に言葉を漏らした隆治と真子の視線の先には、2人と同じように腕を組んでいる風間仁と松井玲奈の姿があった。

「あっ……この人……」

「どうした?」

以前光と一緒に居る隆治の姿を見た為か、玲奈はまじまじと見つめながら彼を指さす。

「ううん。あ、その制服……馬路須加学園の子でしょ?」

「やっぱり……もしかして……」

玲奈から尋ねられると真子は怯えたように呟くが、彼女から静かにするようジェスチャーを取られると大人しく口を閉じた。

「そんな事よりお前、玲奈に何したんだよ。」

「えっ!?」

苛立った様子の仁から突然話を振られると、隆治は戸惑ったような反応を見せる。

「ふざけんなよ、さっき玲奈がお前を見て……」

胸ぐらを掴もうと仁は相手に歩み寄るが、その直後に痛みが走った頬を彼は手で押さえた。

「橘さんを傷付けるなら、私が許さない。」

「ふふっ。ねぇ……私が誰か知らない訳じゃないよね?」

手刀を構える真子が仁を睨み付けながら言うと、一連のやり取りを見ていた玲奈が笑いながら告げる。

「分かってる……分かってるけど……橘先輩。」

「えっ、何?」

自らを落ち着けるように真子は繰り返していたが、不意に名前を呼ばれて驚きながらも返事をした。
その直後、真子は自らの唇を彼の唇へと重ねる。

「私に、力を貸してください。」

真っ直ぐに彼を見つめながら告げてから、真子は再び玲奈と仁の方向へと向き直った。

「お前が誰だろうと、昔の四天王だろうと関係無い。橘先輩を守る!」

鋭い視線を2人へと向けながら、彼女は手刀を作ると怯むことなく声を上げる。

「……もう良いよ。」

「玲奈?こいつらは……」

「良いよ、帰ろ。」

呆れたように玲奈はため息を吐くと、隣にいる相手に告げた。
その発言に反論をしようとするものの最後まで話を聞く事無く答える玲奈が立ち去っていくのを見て、仁も慌ててその後を追う。

「真子ちゃ……」

隆治は暫く玲奈の背中を眺めていたが、我に返った彼が真子の名前を呼ぶ前に彼女が彼へと抱き付いた。

「先輩、本当はめっちゃこわかったんですよぉー!」

彼の服に顔を埋めながら、真子は声を震わせるようにして告げる。
先程の行為を問い詰めようとしたが震える彼女の姿に、隆治は小さく息を吐いてから相手の頭を慰めるように軽く叩いた。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

「玲奈、あいつら何だったの?」

「知らない。」

帰路についた仁が思い返すように告げると、玲奈はどこか気に入らない様子で返事をした。

「玲奈ちゃん、ひょっとしてあの2人のキス見て?全く……」

悪戯っぽく笑った彼は玲奈と唇を重ねようとするが、彼女はそれを避けるように1歩後退する。

「玲奈ちゃん?」

「今は……ごめん。先、帰ってて。」

「え?」

「ごめん、お願い。」

彼女から再度依頼をされると、彼は仕方無さそうに頷いてから玲奈を残してその場を後にした。
暫く静かな時間が流れてから、1人になった玲奈は近くにあった壁を思い切り殴り付ける。

「何なんだよ……このイライラは……」

拳によってへこんだ壁を睨み付けると、玲奈は呼吸を荒らげながら苛立ったように呟いた。

■筆者メッセージ
やっと、こっちはゲキカラちゃん。
こらるめんて ( 2015/10/24(土) 23:54 )