§第5章§
05
「まさか、本当に勝っちまうとは思わなかったぜ!」

「まぁ、私はそう思ってたけどな。」

いつものように火鍋をつつきながら朱里が告げると、どこか自信満々な様子で奈月は言葉を返す。

「おい、どこ行くんだよ!」

「少し、1人にしてくれ。」

そのやり取りで視線を集めた咲良が席を立つと朱里は声を掛けるが、彼女は淡々と答えるとそのまま教室を出ていった。

「何なんだよ、あいつ。」

「ま、普段からあんな感じじゃん。他人には興味無いって感じ。」

どこか不満そうに涼花が告げると、美音はのんびりとした様子で返事をしてから箸を進める。

「面倒事を避けたいのか、本当にてっぺんにしか興味がないのか。」

「クールなだけですって。慕う人は絶対多いから!」

鍋の具材をよそってから光も唸るように自らの考えを呟くと、それに反応したように南那も続けて主張を行った。

「って、だから何でお前ら食ってんだよ!」

「もー、一緒にバーベキューした仲じゃんかぁ。」

「年下なんだから、光さんが居ても文句言わないの普通じゃないの?」

輪の中に混じっている2人に朱里が噛みつくように言うと、くすくすと笑う光に続いて南那も意地悪に笑いながら反論をする。

「何で一番下のお前が言うんだよ!」

「じゃあコイツは良いとしても……お前は絶対に許さない!」

反省の色が見えない様子に玲奈が箸で南那を指しながら言うと、それに便乗するように涼花も声を荒らげた。

「橘先輩、どうしたんですか?」

「あっ、カミソリちゃん。」

鍋を囲んだやり取りをぼんやりと見ていた隆治の隣に真子が来ると、彼は我に返ったように彼女の愛称を呼ぶ。

「真子、って呼んでください!それで、何かあったんですか?」

「うーん、別に同情する訳じゃないんだけどさ……」

誰にも邪魔をされない為か機嫌を良くしながら真子がもう1度問い掛けると、彼は歯切れの悪そうに口を開いた。

「ヨガでも見たんですか?」

「まぁ、そんなとこ。」

まじまじと彼の顔を見ていた真子が察したように言うと、隆治は小さく頷きながら肯定する。

「ラッパッパの宿命みたいなもんですよ。」

「宿命?」

「ラッパッパって肩書きが役に立つのは、ザコが寄ってこなくなる位ですよ。」

真子は話を進めながら席を立つと、彼の座っている椅子の正面にある机へと腰掛けた。

「名を上げようとする奴には狙われるし、負けるなんて事があったら色んなものが傷が付く……自身のプライドも、ラッパッパも、当然この学園も。」

足を揺らしながら話を続ける真子の言葉を受けて、隆治は納得したように数回相槌を打つ。

「なるほどね。」

「だから惨めになるのも必然なんですよ。同情したら更に傷付けるというか。」

理解を示した彼の言葉を聞くと、真子は嬉しそうに笑いながら座っている彼の顔を見下ろした。

「さっ、考えても仕方無いですよ。一緒に帰りましょ!」

「えっ!?」

その後静かになった空気を断ち切るように真子が声を出すと、彼女はにこにこと笑いながら隆治を教室の外へと引っ張っていく。

「りゅーくんやるぅ!じゃあ僕もそろそろ帰ろっかなぁ。」

姿が見えなくなった隆治をからかうように言うと、光はのんびりと告げて隆治達と同じように教室を出ていった。

「……ごちそうさま。また、来るわ。」

「あっ、アイツ!悪い、私も先に帰る!」

それを見た南那はすぐに箸を置くと、そそくさとその場を立ち去る。
光の後を追いかけた事に気づいた涼花も、火鍋のメンバーに一言告げてから慌ただしく南那の後を追いかけた。

こらるめんて ( 2015/10/24(土) 00:05 )