§第5章§
04
「あれ?お前、確かあの時に居た奴?」

距離を詰める事によって気付いたゆりあは尋ねるが、隆治は無言のまま1点を見つめ続ける。

「……聞いてんの?」

「あっ!えっと、何だったっけ?」

彼から反応が無い為にゆりあが苛立った様子で返事をすると、隆治はふと我に返って尋ね返した。

「ってかお前、今どこ見てた?」

「えっ……と……」

「どこ見てたかって聞いてるんだけど。」

視線に気づいた彼女から問い詰められ隆治は言葉を詰まらせるが、曖昧な返事を返す彼へと更に詰め寄る。

「えっと、なんというか……スカジャン着てて脚が綺麗な人に懐かしさを感じて……」

彼がゆっくりと紡いでいく言葉に、ゆりあは腕組みをしながら静かに耳を傾けた。

「だから、そういう事です。」

「男ってそんな奴ばっか。前の奴も……」

「ああ、純の……」

「そいつの名前、出さないでくれる?」

さりげなく隆治が告げた言葉を受けて、ゆりあは表情こそは変えないものの苛立ったのか咄嗟に彼の頭のすぐ横の壁を殴り付ける。

「ご、ごめんなさい……」

「何で男ってのはこんな風に触りたがるんだか。」

「別に、僕は触りたい訳じゃない!」

舌打ちをしてから呆れたようにゆりあは告げるが、隆治はむきになった様に反論をする。

「何?口答えすんの?」

「口答えじゃないけど……違う事は違うって言いたいだけ。」

はっきりと告げた相手にゆりあは何故か笑いながら尋ねると、隆治は申し訳無さそうに答えた。

「へぇ……何でそんなラッパッパに話すの慣れてるわけ?」

「それは……その……」

質問を重ねられた彼の頭にはダークグリーンのスカジャンを着た人物が思い浮かぶが、隆治は否定するように頭を振ってから言葉を探す。

「まぁ、良いや。今日は見逃してやるよ。」

「……ありがとうございます。」

小さく息を吐いたゆりあの方から話題をそらされると、彼は安堵したように礼を述べた。

「早く行けば?ヨガと咲良がどっちが勝ったか知らないけどさ、もう決着着いたんじゃない?」

「そうだった!ありがとう!」

ゆりあの1言ではっとした隆治は再び彼女へと礼を告げると、先程向かっていた地点目指して掛けていく。

「ふーん……面白いじゃん、アイツ。」

彼の後ろ姿を眺めていたゆりあは、にやりと悪戯な笑みを浮かべながら小さく呟いた。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

「確かここら辺って聞いて……!」

聞いていた地点に到着した隆治が部屋に目を向けると、床に倒れ込んでいる人物を見つける。

「大丈夫ですか!?今……」

「私に……触るな……っ……!」

相手に駆け寄り声を掛けた瞬間、その人物は荒い呼吸をしながらも隆治を拒絶するように告げた。

「まさかラッパッパの……」

「お前のような奴に助けられて……更に辱しめを受けろと言うのか……」

訴えを聞いた隆治が彼女の姿を改めて見ると、彼は思わず息を飲む。
倒れている人物がラッパッパの四天王であるという事に気付き再び声を掛けようとするが、彼女は頑なに手を借りる事を拒否した。

「けど……」

「うるさい!……目障りだ……」

隆治の言葉を遮って、彼女はとうとう乱れる呼吸の中声を上げる。
隆治は立ち上がり出口に向かうと1度は相手を気にするように振り返るが、やがて静かにその場を後にした。

こらるめんて ( 2015/10/23(金) 11:36 )