§第5章§
03
「痛たたた……負けちゃったっすよせんぱーい!」

「こらこら、大人しくしてて!なんで僕が包帯替えないといけないんだか。」

痛めている部位に触れられた為か真子は一瞬表情を歪めるが満更でも無い様子で言うと、手当てをしている隆治は困ったように呟く。

「あれ?隆治さんだけ?光さんは?」

「いつも一緒に居る訳じゃないし……というか、さん付けで呼んでくれるようになったんだ?」

「別に……カミソリに本気で叱られただけだ。」

南那からの呼ばれ方の変化に気付いた隆治は驚いたように尋ね返すが、彼女はどこか不満そうに答えた。

「おい!それ言うなって!」

「本当の事だろっ。なんで光さんのオマケみたいな……」

「あ?今何て言った?」

暴露をされた真子はすぐに止めようとするが、呆れた那覇は溜め息を吐いて告げる。
その言葉を受けて真子は思いきり南那を睨みつけると、彼女も負けじと相手に鋭い視線を向けた。

「こらこら、2人とも喧嘩しないで。……それで、宮脇さんは2人の事知ってるの?」

「運悪く、ボコられた後に見つかっちゃいましたから。」

「格好悪いところ見られたな……」

間を取り持たれた南那と真子は昨日のことを思い出した為か、がっくりと肩を落としながら落ち込んだ様子で言葉を紡いでいく。

「まぁ、宮脇さんの性格からして敵を討つ性格はしてないよなぁ。」

「けど、ラッパッパが自分から対戦を指名してきたんです!」

「てっぺんを目指す咲良さんが逃げる訳が無い!」

暫くその2人の様子を見ていたが、咲良の話が出た途端に元気になった真子と南那は目を輝かせるようにしながら力強く訴え始めた。

「確かにね。」

「おい!お前!」

完全に元気を取り戻した2人を見て笑っていた隆治であったが、彼に声を掛けながらばたばたと火鍋のメンバーがその場に姿を現す。

「バカモノとやりあってそれかよ!」

「全然怪我もないじゃねぇか!」

急の登場に隆治が驚いていると、彼の姿をまじまじ眺めながら朱里と玲奈が感心した様子で告げた。

「ば、バカモノとやりあったんですか!?」

「えっ?ううん、やり合ってはいないかな。」

彼女らの発言によって事態を把握した真子は心配そうに問い掛けるが、隆治は苦笑いしながら申し訳無さそうに答える。

「は?じゃあお前は……何しに行ったんだ?」

「ああ、なんかバカモノが途中で呆れて帰っちゃって……」

「何だよ、それー。」

隆治からの説明を聞いて火鍋のメンバーも落ち着いたのか、不満そうな発言の中にも安堵の息が混ざる。
その直後だった。

「おい!ヨガが転校生連れて歩いてったぞ!」

廊下から聞こえた何者かの声を耳にすると、全員が驚きのあまり顔を見合わせる。

「行かなきゃ!」

「そうだね、様子が心配だ。」

1年ペアと火鍋のメンバー、隆治は教室を後にして廊下を走っていくが、隆治の目の前を何かが通り過ぎた為に足を止め。

「急に止まるなよっ!」

「これは……トランプ?」

「まさか……!」

急に止まった彼の背中ににぶつかった美音はむすりとして言うが、彼が手にしているトランプを見ると怯えたように辺りを見渡した。

「良いから、みんな先に行ってて!足を止められたのは僕だから。」

薄いピンクのスカジャンを着用している人物が近寄って来るのを見た隆治が告げると、彼女達は迷っていたがやがて彼を残して廊下を走っていく。

「全く……次から次になんなんだよ……」

昨日の事があった為か彼は深く息を吐いてから、ゆっくりと歩み寄って来る相手に向き直った。

こらるめんて ( 2015/10/21(水) 23:06 )