§第5章§
02
「あちゃー……」

「なんで使ってんだよ!ったくよ!」

目の前に広がる光景に隆治がばつの悪そうに頭を押さえると、李奈は不満そうに声を上げた。

「こんなヘタクソな野球の練習してる位なら……」

「これは野球じゃないよ、ソフトボール。」

「どっちでも良いだろ、ヘタクソはヘタクソなんだからよ。」

苦笑いをしながら彼は補足をするが、彼女は舌打ちをしてから声に苛立ちを含める。

「ぶつぶつ何か呟いてるわ、変なセリフ言ってるわ、ガキに飯食わせてるわ……ふっ、やるんだったらもっとマシな……」

「おい、テメェさっきから何なんだよ!」

嘲笑するように李奈は言葉を続けていると、バットを持ったショートカットの少女が声を荒らげながら2人の方向へと歩み寄ってきた。

「喧嘩売ってんのか?あぁ?」

「お前、口利く相手選んだ方が良いぞ。」

その少女は睨みながら尋ねるが、李奈はどこか自信満々な様子で相手へと告げる。

「まぁまぁ!2人とも落ち着いて!そんな睨み合ったって何にもならないよー。」

「ちっ、無難な事ばっかり言いやがって。」

「何なんだ……コイツ……」

にこやかに笑いながら間を取り持つ少女が現れるとショートカットの少女は舌打ちをし、李奈は呆れたように溜め息を吐いた。

「あっ……あの子……」

3人がやり取りをしている中グランドに目を向けていると、何かに気付いた隆治はぽつりと言葉を溢す。

「ちょっと、そこの人。」

「えっ!?な、何ですか?」

その後ぼんやりと彼が眺めていた眼鏡を掛けた少女が、隆治の元へと駆け寄ってくる。

「今、私の脚見てましたよね?主に太股の辺り。最低です。」

「えっ!?そんな事は……」

「いえ、見てました。顔の向きを右方40°下方20°として私の立っていた……」

「えっと、あの……」

むすりとしながら告げられる言葉に隆治は否定をしようとするが、少女に攻め立てられる言葉を詰まらせた。

「まぁまぁまぁ、そっちの2人も落ち着く。ほらほら、練習に戻るよー。」

先程と同じようににこにことする少女から間を取り持たれると、眼鏡を掛けた少女は不満そうながらもグランドへと戻っていく。

「何だったんだろう、あれ。」

「知るかよ。あー!なんで今日は……」

「あのっ!」

隆治の言葉を受けて李奈はさらに苛立ったように告げるが、今度は別の少女から声を掛けられた。

「今度は何だよ……」

「あのっ、高校は違いますけど……その……ソフトボールの助っ人、して貰えませんか?運動神経が……」

「あーっ、もう知らねーよ!おい、お前!何とかしとけよ!」

申し訳無さそうにお願いをする少女の言葉を遮ると、李奈はその場を立ち去った。

「なんか、ごめんなさい。」

「いえ……こちらこそ。」

隆治が申し訳無さそうに謝ると、少女も俯くような形で彼へと謝罪をする。

「頑張って、下さいね。」

「はい、ありがとうございます。」

彼の励ましにはにかんで返事をした少女がグランドへと戻ると、隆治は遠くにある李奈の背中に息を吐いてから帰路へと着いた。

こらるめんて ( 2015/10/18(日) 23:04 )