§第4章§
08
倒れた隆治を光が何とかバスに運ぶようにしてから、何かを探して社内を見渡した。

「何探してんの?」

「枕だよ、枕。何か無いかなぁって。」

きょろきょろとしている彼に莉乃が尋ねると光は引き続き枕になるものを探しながら答えるが、とある場所で彼の視線が泊まる。

「……何だよ。」

「カミソリちゃんさ、りゅーくんに膝枕してあげてくれない?」

「ひざっ!?」

視線を向けられた真子は不機嫌そうに言うが、悪戯っぽく笑いながら告げた光の言葉に戸惑ったように返事をした。

「あ、嫌?じゃあ莉乃ちゃんにして貰おうかな?脚だけは綺麗だし。」

「脚だけはって何だよ!」

「待て、待て!」

返事が来ない為に光は莉乃へと言うと、それが癪に触ったのかすぐに彼女は言い返す。
そのやり取りの直後、2人の会話に真子が割って入った。

「分かったから……するから、膝枕。」

「あははっ、じゃあお願いしようかな。」

視線を泳がせながらも告げた真子に笑いながら光は言うと、彼女を隆治の方へと手招きする。

「これっ……これで良いんだな……?」

「うん、ばっちり。あ、もっと喜ばせたいなら……」

緊張で強張った様子の真子に光はにっこりとしながら告げるが、何かを思い付いたのか彼は彼女の耳元に口を近付けた。

「……りゅーくん、太股が好きだから……」

「う、うるさい!あっち行ってろ!」

にやにやと笑いながら告げる彼の言葉に真子が一喝すると、光は逃げるように前方の席へと移動する。

「なぁ……あっ!カミソリがスカー……むぐっ!」

「うるさい、静かにしてろっ……!」

話し掛けようとした際に真子がスカートの裾を上げて直接太股で膝枕をしているのを見た南那は思わず声を上げそうになるが、咄嗟に真子は相手の口を塞いで声を遮った。

「……玲奈……」

気を失った隆治が無意識に呟いた言葉を聞き逃さなかった真子は、驚いたように顔を上げる。

「玲奈?」

「ぎくり。」

訳を知っていそうな光へと真子は視線を向けると、彼は冗談目かして返事をした。

「おい、玲奈って誰だよ。」

「玲奈は……まぁ、りゅーくんの片想いの人だよ。」

「片想い……」

機嫌が悪そうに告げる真子に光が説明をすると、彼女は何か思い詰めた様子で呟く。

「あら……いきなり失恋を……」

「片想いなら、私がなんとかしてあげれば良いのか……」

落ち込んでいる彼女を見た光は苦笑いをしていたが、真子は全く気に留めていない様子で呟きを続けた。

「あははっ、彼女ガッツあるね。」

「そりゃそうだ。手刀1本を極めていく位だからな。」

真子の様子に彼が笑うと、光の隣に移動した南那は真子を見ながら自信ありげな様子で告げる。

「しかし咲良さんを……」

「あ、多分咲良ちゃん寝てるからりゅーくんだけに集中してるんじゃない?」

その後南那は打って代わって呆れたように言うが、寝ている咲良を見た光はのんびりと答えた。

「おかしい……」

「どうしたの?」

静かに様子を見ていた莉乃であったが、頭を悩ませながら呟いた彼女に光は問い掛ける。

「あいつと玲奈って奴の事……何か知ってるような、知らないような……まさか、玲奈ってゲキカラの…!?」

「あはは、違う違う。そんな訳無いでしょ?」

ハッとした莉乃は声を大きくして尋ねるが、光は苦笑いしながらすぐに否定をする。

「……莉乃ちゃんが思い出したら凄いけど、それはそれで面倒だなぁ……」

誰にも聞こえる事の無い声量で、光は困ったように呟いてから小さく溜め息を吐いた。

こらるめんて ( 2015/10/08(木) 17:38 )