§第4章§
04
「何でお前らこんなとこでも鍋やってんの?」

「うるせーよ。火鍋はどこでやっても旨いんだよ。」

「外で食ったら旨く感じる、そんな事あるだろ?」

火鍋を囲むメンバーを見て真子が冷笑するが、それに言い返す朱里に続けて玲奈も口を開いた。

「なぁ……食べて……ます?」

中途半端な敬語を使うようにしながら、南那はゆっくりと光へと歩み寄っていく。

「あら、ゾンビちゃん。」

「その呼び方……辞めて欲しいんだけど。」

彼女の発言に光はくすくすと笑いながら愛称を呼ぶが、南那は目を背けながら小さな声で告げた。

「ん?どういう意味かな?」

「南那で……南那で良いから。」

にこにことしながら光が質問を重ねると、南那は視線を泳がせながらも静かに答える。

「そっか。ありがと、ゾンビちゃん。」

「おい!名前で呼んで良いって言ったそばからそれは無いだろ!」

許可を出しながらも愛称で呼ばれた事に南那が憤慨したように言うと、彼は悪戯な笑みを浮かべた。

「……まぁ良いや。ほら、持ってきたから……」

「待てよ!待て!」

光に向かって彼女は皿を差し出すが、その行動を制止するように2人の元へと抗議の声が上がる。

「お前後輩だろ!先輩の分の肉焼いとけば良いんだよ!」

「は?焼いてるだろ。藤宮先輩のだけど。」

涼花は声を荒らげながら南那へと突っかかるが、言葉を受けた彼女も涼花を睨み付けながら即座に言い返した。

「はぁ?教育させなきゃいけないみたいだな!」

「いやいやいや、お前の拳じゃ軽すぎて意味無いから。」

「もー、その辺にしときなよー。」

お互いに肉の乗った皿を持ちながらも一触即発な雰囲気を出している2人にのんびりと告げながら、光はゆっくりと立ち上がる。

「うーん、そうだな。僕が今食べたいのは……」

2人からの視線を背負い肉を焼いている網へと光は近づくと、話を続けながらも手にしていた割り箸を割る。

「これ。」

「あっ!テメェ、何しやがるんだよ!」

丁度良い焼き具合になったホルモンを見つけるや否や彼がそれを口に運ぶと、莉乃は衝撃を受けたように悲鳴に近い不満の声を上げた。

「ホルモン、うめぇー!」

「ふざけんな!おい、買ってこいこら!」

光が台詞を真似てから逃げるように立ち去ると、莉乃はすぐに立ち上がって彼の後を追う。
その少し離れた場所で、隆治は咲良へと料理の乗った皿を差し出していた。

「……何のつもりだ?」

「馴れ合いが嫌なのは分かるけどさ、何にも食べてないでしょ?」

受け取ろうとしない彼女は面倒そうに尋ねるが、隆治は穏やかな声色で咲良へと返事をする。

「関係無い、お前には。」

「あるよ。」

再び顔を背けて会話を断ち切ろうとする咲良であったが、彼女の言葉にすかさず隆治が反論した。

「何も食べないで手合わせして、それで負けた時に……」

「逃げる理由にしない為、か。」

「そういう事。」

最終的に言いたい事を咲良が代わりに答えると、彼は数回頷いてから満足そうに笑う。

「時間になったら、呼びに来るからさ。」

渋々と皿を受け取った咲良へとそう告げてから、隆治は騒ぎが起きている火鍋のメンバーの元へと向かった。

こらるめんて ( 2015/10/08(木) 17:36 )