§第4章§
01
数日後、火鍋を囲む中で朱里は気になるものにちらちらと視線を向けていた。

「なぁ…気になったんだけどよ。」

「えっ?どうしたんですかぁ?」

「僕も分からないなぁ…」

朱里の切り出した話を受けて、真子と光は自らの皿へと鍋をよそうようにしながら彼女の言葉に答える。

「テメェらかなんでこの教室にいんだよ!ここは2年の教室だぞ!」

「まぁまぁ、そんな怒鳴ったら美味しい鍋も美味しくならないよ?」

怒りを露にする朱里を宥めるように、彼は空になった彼女の皿へと具材を継ぎ足した。

「お前が勝手に食って…」

「お!辛さがちょうど良い!作ってたのはジセダイちゃんだよね?料理上手いなぁ…」

今度は美音が文句を言おうとするが、光はにこりと笑うようにしながら味を絶賛する。

「そ、そうか?そんな褒めても…」

「丸め込まれてんじゃねぇよ!輪に入ってくんな!」

「クソガキちゃんは相変わらず冷たいなぁ…」

褒められて少し喜ぶ美音に涼花は告げてから、よそに行くジェスチャーをしながら光へと怒鳴り声を上げた。
光は苦笑いしながらも彼女の隣に行くと、涼花は逃げるように彼との距離を取った。

「おい、お前は何で居るんだよ。」

「あ、僕?それは…光に引っ張られて…」

「自己主張の無い奴だなぁ…」

窓際で本を読む隆治にも朱里が尋ねると、返ってきた答えに彼女は呆れたような反応を見せる。

「まぁ…勝手に食う1年とか、こいつよりはマシだろ。」

「勝手にって、腹減ったからしょうがないだろ?」

「私は、この教室に咲良さんと橘先輩がいるから!」

玲奈が箸で1年の2人と光を指しながら言うと、南那と真子はすぐにその言葉に返答する。

「ね。いっその事さ…みんなでキャンプに行かない?」

彼が突然行った提案に、唖然となったのか全員が彼を見るようにしながらも口を閉ざした。

「はぁ!?」

その直後ようやく理解が出来たのか、ほぼ全員が同じタイミングで不満を口にする。

「なんでこんな1年と…ってかお前らとも仲良しこよししなきゃいけねぇんだよ!」

「はぁ?雑魚と一緒に行くとかこっちから願い下げだ。」

朱里が真子と南那を指差しながら抗議をすると、真子は彼女を睨み付けながらも反論する。

「まぁまぁ。皆で焼肉でもしながら…」

「焼肉!」

光の告げた言葉に反応したのか、どこからともなく緑のジャージを着る指原莉乃が姿を現した。

「ね、姐さん…どっから出てきたんすか…」

「それは良いよ。そのキャンプの件、火鍋は参加強制だから。」

認識できなかった早さに奈月は驚いて尋ねるが、莉乃が口にした言葉に火鍋のメンバー全員が目を丸くする。

「はぁーい…」

彼女達は顔を見合わせるようにしてから、しぶしぶと莉乃からの指示に返事をした。

「まさか1年の2人は…火鍋が参加するイベントから逃げる?」

「誰が逃げるって言ったかよ!ああ、良いぞ、行ってやるよ!なぁ?」

「弱い奴から逃げるほど、私たち腰抜けじゃないんで。」

今度は1年の2人へ視線を向けて挑発的に告げると、真子と南那は半ばむきになって言い返す。

「さ、あとはアンタにまかせたよ。」

「えっ?あはは、どうも。」

火鍋と1年の参加が決定すると、莉乃は話の主導権を光へと返した。
彼は小さく笑ってから、自らの席に座って教科書を見ている人物に歩み寄っていく。

「おい、そいつは…」

「言うだけ無駄じゃね?」

朱里と涼花が否定するように言うが、光は咲良の机の前でぴたりと足を止めた。

「キャンプ、一緒に来ない?」

「…馴れ合うつもりは無い。」

声を掛けられた咲良は即答すると目を合わせる事なく席を立ち、教室から出ようとする。

「来るんだったら…絶対にてっぺん狙うには必要な稽古つけてあげるよ。」

そんな彼女の背中に光は告げると、咲良は教室の扉を前にしてぴたりと足を止めた。

「…りゅーくんがね。」

こらるめんて ( 2015/10/08(木) 17:35 )