§第3章§
07
「凄いらしいな、転校生!」

「2年の火鍋と1年のペアを倒しただけ…そんな大した事じゃない。」

吹奏楽部の部室に入るや否や告げる川栄李奈に、精神統一を行う入山杏奈が落ち着いた声で答える。

「実力、見に行ってくれば良かったなー。おたべはあの転校生、どう見る?」

2人の言葉を聞いていた木崎ゆりあは、壁にもたれ掛かる人物の方に視線を向けながら尋ねる。

「そうやね…彼女の向上心やったらそのうち階段、上ってくるやろうね。」

「はい!やりたい、やりたい!」

意見を求められると、横山由依は暫く考えた後に口を開く。
それを聞いた李奈は思いきり手を挙げながら許可を求めた。

「やる気満々やな?様子見、行ってきてもええで?」

「行ってくる!」

由依が許可を出すと李奈は嬉しそうに声を上げてから、勢いよくドアを開けて吹奏楽部の部室から出ていく。

「ソルトに挑みにくるのも、時間の問題やなぁ。」

「…そうは、させない。」

言葉を続ける由依の言葉に煽られたように、杏奈はヨガマットから立ち上がると開いたままのドアから静かに出ていく。

「マジックも見てきて良いんやで、気になるんやろ?」

「じゃあ探してきまーす。」

ゆりあにも許可を出すと、彼女もマジック台に広げていたトランプをポケットにしまってから部屋を後にした。

「皆やる気満々やな…久々に良い風が吹きそうや。」

「…嗅いだ事の無い、風の匂い…」

開いたままのドアを見ながら由依が呟くと、それに続くように彼女の背後から声が聞こえる。

「なんやソルト、起きてたんやね。」

「早く上がって来い…宮脇咲良。…けどてっぺんは…まだまだ遠い…」

「ソルトもご執着、って訳やね。」

窓の外を眺めながら島崎遥香が告げる言葉に、由依は目を閉じながらも小さく笑う。

「てっぺんには…まだあの2人の方が近い。…あの2人を越えて来い。」

「2人?ソルト、その…」

遥香は言葉を続けると、やがて自らが出てきた部屋へと再び戻っていく。
疑問を感じた由依は深く尋ねようとするが、問うよりも早くドアが閉まると諦めたように息を吐いた。

「咲良は分かる。後の2人…誰かは知らんけど…ソルトが期待してるんや、裏切らんたってな?」

こらるめんて ( 2015/10/08(木) 17:34 )