§第3章§
05
「そう気落ちしない!なんとかなるってば。」

「光は他人事だからそんな風に…」

「あっ!」

意気消沈しながら隆治は歩いていたが、何かを見つけた光は彼の肩を激しく叩く。

「今度は何…」

「りゅーくん!あれ、あれ!」

苛々しながらも答えるが、必死に告げる光の訴えを受けて彼が示す方向へと視線を向けた。

「あれは…玲奈!?」

「だーめ。」

柄の悪い人物に囲まれている自らの最愛の相手を見つけ、隆治は名前を呼びながら彼女の元に駆けつけようとする。
しかしながら、それは咄嗟に腕を掴んだ光によって阻止された。

「玲奈、助けてあげなきゃ!」

「ネズミちゃんといい、りゅーくんといい…理解できないのかな?…今のりゅーくんは、ゲキカラちゃんと無関係なの。」

掴んでいる相手が必死になる隆治の為か、いつもの余裕を無くしながらも光は真剣な様子で告げる。

「だからって…」

「だからどうとか、こうとか無いの。…記憶が戻ったか調べる罠だったらどうするの?」

腕を離させようと隆治は掴まれている側とは反対の腕を使おうとするが、それを察した光にそちらの腕も掴まれた。

「それに…彼女礼儀正しくなってるとはいえ、マジすか学園ラッパッパのゲキカラだよ?…ほら、ね?」

光から促されて再度玲奈の方向を見ると、彼女が震えるほど強く握り拳を作っている様子が目に映る。

「ちょい待ちな!」

玲奈が我慢の限界を感じ動き出そうとした瞬間、声を上げながら1人の男がその場に乱入した。

「えっ…?」

「あれは…あはは、何の偶然だろうね。」

突然姿を現した風間仁に隆治は唖然とするが、光は笑いながら成り行きを見守る。

「何だ、テメェ…関係無ぇ奴が…」

「関係無い?…女の子1人にこの人数は非常識な気がするけどな。」

柄の悪い連中は仁を睨み付けるが、彼は涼しげな表情を浮かべながら玲奈を庇うような立ち位置に割って入りなかがら答えた。

「こいつ、やっちまえ!」

「話し合いで解決しようとしない奴等は好きじゃないな。」

リーダーらしき人物から指示を受けた2人が飛び掛かるが、仁は瞬く間にその相手を地面に転がした。

「な…なんだこいつ…」

「テメェら、ずらかるぞ!」

それぞれが1撃でやられたのを見て、倒れている仲間を置いて柄の悪い連中は逃げるように走り去る。

「大丈夫ですか?」

「はい…あの…ありがとうございました。」

周囲が静かになってから仁が問い掛けると、玲奈は深々と頭を下げるようにしながら礼を述べた。

「いえいえ。じゃあ、俺はこれで。」

「ちょっと待ってください!」

「あの…良かったら、お礼に…お食事でも…」

仁は立ち去ろうとするが、玲奈は頬をほんのりと染めながら彼の服の裾を掴んで呼び止めた。

「おーい。りゅーくん、大丈夫?」

「そんな…そんな事って…」

「あちゃー…これは重症だな。」

目の前で行われた出来事に隆治が硬直しながらうわ言のように繰り返しているのを見て、光は確認するように彼の目の前で手を振ってみせる。

「ランクは上でも鎌鼬が使えない仁なら…やれる。」

「だから、やっちゃだめなんだって。…これは相当きてるなぁ…ほら、取り敢えず今日は帰るよ。」

彼らしくない言葉を口走る様子を見て光は苦笑いしながら、なんとか隆治を引っ張って帰路に戻った。

こらるめんて ( 2015/10/08(木) 17:33 )