§第3章§
01
「みんな、怪我が酷くなくて良かったよ。」

「咲良は完全に手を抜いてた…本気じゃなかったんだよ。」

火鍋を手際良く作っていく隆治が言うと、朱里はどこか悔しげに告げてから唇を噛んだ。

「クソガキちゃーん、なんで今日は中庭なの?」

「気安く話しかけてくんなっての!」

相変わらず光は涼花の隣に座ろうとするが、彼女は声を荒らげるようにしながら距離を取る。

「あはは、嫌われたもんだなぁ。」

「火鍋は、どこで食ってもうまいんだよ!おいー、まだかよー。腹減ったぞー。」

涼花の代わりに奈月が彼の質問に答えると、調理をしている隆治を急かすように告げた。

「ちょっと待ってね…はい、大丈夫かな。」

料理を仕上げると隆治は全員に箸と皿を配るようにしてから、彼女達がよそるのを眺める。

「やっとだな!じゃあ、早速…」

朱里の号令を受けて火鍋のメンバーが同時に口にすると、ほぼ同じタイミングで全員が目を見開いた。

「辛ぇー!」

口々にそう告げると、水を飲む、口の中を扇ぐといったそれぞれのやり方で辛さを和らげようとする。

「ふざけんな!なんでこんな辛ぇんだよ!」

「えっ…そんな辛いかな…」

涙目になりながら告げる玲奈の不満を受けて、隆治は困ったように頭を掻きながら答えた。

「初めて食ったぞ!こんなの!」

「そんなに辛かったかな…」

不満を露にしている朱里に言われ隆治も自らの皿を用意すると、それによそって口に運ぶ。

「…言うほど、辛いかなぁ…」

「何なんだよ、お前…」

「今までどんなの食ってきたんだよ…」

口にしたにも関わらず平然としている彼を見て、美音と奈月は呆れたように告げた。

「なぁ…あいつバカ舌?」

「ふふふ、彼も色々あって辛いのに耐性が出来ちゃったんだよ。」

舌を扇ぐようにしていた涼花が隣に居る光に尋ねると、彼はその光景を楽しむように笑いながら答える。
その次の瞬間、こちらに近付く足音を耳にして全員がそちらに目を向けた。

「あれー?こんな所で何してんすか?」

「ここ、うちらの縄張りなんですけど。」

ニヤニヤと笑みを見世ながら現れた真子が火鍋を囲むメンバーに声を掛けると、南那もそれに続ける。

「はぁ?1年があんまり調子乗んなよ。」

「ふふふ、転校生に初日からやられてる奴が何言ってるんだか。」

朱里は2人を睨み付けながらも言うが、真子は鼻で笑うようにしてから彼女に反論した。

「あっ、カミソリ。あいつ…」

そんな中、光の姿に気付いた南那が真子に告げると、彼女は冷たい視線を彼へと向ける。

「お前、火鍋と何やってんの?」

「こいつらが手ぇ空いてるから使ってやってたんだよ。…おい、もう良いぞ。」

光が答えるよりも早く朱里が告げて立ち上がると、他のメンバーも立ち上がって戦闘の構えを取った。

「そんな事…」

「行くよ、りゅーくん。」

隆治はメンバーを守ろうと口を開き掛けるが、朱里からの視線で察した光は物陰に隆治を引っ張っていく。

「1年にしっかり教えてやんなきゃいけねぇなぁ…」

「負け犬風情に、私達負けないんで。」

「来いよ、どっちが上か教えてやるよ。」

威圧的にお互いが言葉を交わした直後、拳を交えるべく7人は地面を蹴って相手に飛びかかった。

こらるめんて ( 2015/10/08(木) 17:30 )