§第19章§
05
隆治達が集会を行っているほぼ同じ時期、彼らが対立をしている一段も後日の決戦について言葉を交わしていた。

「もう前日だぜ?抜かり無いよな。」

「ええ、大丈夫ですよ。きっと彼女らは上手くやってくれます。」

明日の舞台となる建物の写真をのんびりと眺めている誠に、興里は声に力を込めて問う。それを受けても誠の余裕の表情は崩れなかった。

「アイツらの中でマトモに戦えるのが何人居るんだか。」

「おい。」

参加者を思い出しながら自らも写真を覗き込もうとする興里であったが、割って入った声により2人は写真からそちらに目を移す。

「これはこれは。何のご用件で?」

「約束通り、咲良とは戦えるんだろうな。」

普段ならば微塵も使うことの無い丁寧な言葉を興里が遥へと投げ掛けると、彼女は鋭い視線を向けてから尋ね返す。

「あのなぁ、約束した覚えは……」

「ええ、勿論。貴女に約束した通り、その機会は設けますよ。」

反抗的な態度に興里も口調を荒らげるが、誠は手で制してから穏やかに返事をする。

「忘れちょったらお前らから相手にしちゃるき、覚悟しとくったい。」

「それは恐ろしいですね。約束を守らなければ。」

威圧的な言葉を残して、遥は踵を返し2人の元から立ち去る。
彼女を笑顔で見送っていた誠であったが、ある程度の距離が空くと瞬時に真顔になり写真へと目を戻した。

「心配そうっすね。」

「お前のことは好かん。」

部屋から出る直前、待ち伏せしていたように麻友から声が掛かるが、遥は耳を貸さずに手をドアノブに掛ける。

「この決戦の意義は脱落者を増やすこと。まぁ、この程度の戦いで脱落するような雑魚がここの制圧の時の戦力になるとは思わないっすけど。」

重要であろう情報を簡単に口にしてみせた彼女に乗せられてか、気が付くと遥はドアノブから手を離し、麻友と対峙していた。

「お前は、なんでこっちの連中に付いてる。」

「理由、答えなきゃ駄目っすか?」

「簡単に裏切るって素敵な話を聞いたことがあるもんでな。」

いつも皮肉を口にしていることを知っている為か、遥は意地悪そうに笑いながら問い詰める。
しかしながら麻友は余裕の笑みを浮かべてみせると、息を1つ吐いた。

「あんな寄せ集めみたいなとこに行ったら、前線に立たなきゃ行けなくなる。あっしの場合、こっちで高みの見物ができる方が性に合ってるんすよ。」

「やっぱり、お前の事は好かんっちゃ。」

淡々と彼女が口にしている理由から改めてろくでも無いことを再確認すると、今度は遥が溜め息がこぼした。

「ふふっ、あっしはあんたの事、そんなに嫌いじゃないっすけどね。」

「馬鹿にしてるのか?」

否定的な態度を露骨に出されたのが可笑しかったのか麻友が声に出して笑った後の言葉に、遥は先ほどの余裕を無くして噛みつく。

「良いじゃないか。真っ直ぐに目標があって、その周りの事は二の次。大事なのは、芯が通ってるかどうか……そうだと思う。」

「ネズミ?」

突然いつもとは雰囲気が打って変わり、落ち着きがありながらも、どこか柔らかみのある口調で麻友は言葉を続けていく。

「咲良達は来る。来て貰わないと私も困る。」

「何を企んでいる?邪魔する気か。」

「まさか。お前達の決着に関しては興味無い……むしろどうでもいい。」

自らの意思とは違う指摘をされると麻友は声を強くしつつ、嘲るように鼻で笑って否定する。
いつもは感じることの無いその威圧感に飲まれてか、思わず遥は息を飲んだ。

「……いけない、いけない。柄になく少し喋り過ぎちゃいましたねぇ。」

「普通に喋れるならその喋り方やめろ。ムカつく。」

「普通?何の事だか。あっしはこれが普通っすよ?」

無言が続いた為か我に返った麻友が普段通りの口調に戻ると、途端に苛立ちが込み上げた遥はそっぽを向いた。

「とにかく、あんたの事は嫌いじゃない。応援してるっすよ、カツゼツ。」

「しぇからしか。」

相手の肩に手を置いて悪戯に笑うと、乗せられた手を振り払うようにしてから遥は部屋を後にした。
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■筆者メッセージ
拍手下さった方、ありがとうございました(礼)
こらるめんて ( 2019/01/15(火) 21:50 )