§第19章§
02
慌ただしい形で学園を出た後、隆治と玲奈はゆっくりと自宅に向けて足を進めていた。

「ねえ、玲奈。」

「んー?どうしたの、りゅーくん。」

暫く歩きようやくいつも通りに落ち着いてきたと感じたのか、隆治は彼女へと声をかける。

「どういうつもりなのかな。」

「ふふ、ちょっと言ってることが分からないかも。」

先程の真意を聞こうと尋ねるが、機嫌が直った玲奈はきょとんとして小首を傾げた。

「どうしてあの2人の面倒見ようとおもったの?」

「あの2人……ああ、あいつらか。」

隆治からの補足で意図が掴めると、思い出すように告げる玲奈の声のトーンが僅かに落ちる。

「足りないんだよ、色々と。」

「足りない?」

しかしながら完全に機嫌が悪くなる様子もなく、感情の起伏が落ち着いたまま玲奈は話を続ける。

「舎弟、ってわけじゃないけど……私が優子さんについてた時はあんなに軟弱じゃなかった。」

「軟弱、かぁ……」

「まぁあんな様子じゃ飼い犬なのがお似合いなのかもしれないけど。」

説明を終えた玲奈は付け加えるように言うと、機嫌が良くなったのか悪戯っぽい笑みを彼に向けた。

「強くなって欲しいの?」

「強く……そうかもしれないね。」

再び隆治から尋ねられると、玲奈は考える様子を見せてから静かに答える。

「ラッパッパを名乗ってる以上、半端なことするのは許せないから。」

「……そっか。」

真剣な彼女の様子にラッパッパへの愛着を再認識すると、隆治からも笑みが自然と溢れた。

「そういえば、何でそんなこと聞いたの?」

「いや、なんか揉めてたし……」

しかしながら今度は玲奈がふと首を傾げて問い掛けると、嫌な予感がした隆治は言葉を詰まらせながらも答える。

「気にかけてるの?あの2人を?」

「いや、そういうわけじゃ……」

「慕われてるから?特にあのカミソリとかいう奴?」

質問が進んでいくと同時に声のトーンが落ちていくのを感じとると、隆治の焦りの度合いが増していく。

「玲奈、落ち着い……」

「あはっ、本当にりゅーくんは気が多いんだなぁ……アハハ、アハハハッ!」

彼女を宥めるように隆治は言うが、それが耳に入らない様子で玲奈は高笑いを行った。

「玲奈ストッ……」

「なーんてね。」

止めるよう言いながらも観念しているのか隆治は目を瞑りながら制するが、次に耳に届いた玲奈の言葉にゆっくりと目を開けた。

「玲奈、その冗談は寿命縮むから……わりかし言葉通りの意味で……」

狂気的な笑みではなく機嫌が良い時の笑みを向ける彼女に、隆治は安堵の息を大きく吐く。

「りゅーくんも色々大変なんだもんね。あの連中に負けない為に色んなこと気にしなきゃいけないんだから。」

「……そうだね、負けられない。」

気遣ってくれる玲奈にありがたさを感じながらも、隆治は真顔になって深く頷いた。

「だからって、変なことしようもんなら……」

しかしながら真剣な表情を浮かべていたのも束の間、再び玲奈は悪戯っぽく笑う。

「……噛みつくよ。私は見てるからね?あはっ。」

「あ、あははは……」

念を押すかのように彼女か笑い声を上げると、隆治は困ったように苦笑いを浮かべた。

こらるめんて ( 2017/04/15(土) 21:26 )