§第1章§
05
「光ーっ!」

「あっ、おはよう隆治くん。」

翌日、通学中に隆治から声を掛けられた光は笑いながら小さく手を振って挨拶を返す。

「聞いた?純くんの話。…なんか、マジックにフラれたんだって。」

「へぇー…マジックに。」

「何でだろ。あんなに仲良さそうだったのになぁ…」

話題を振られた光は大して驚いた様子も見せずに繰り返すが、隆治は原因を考えるように悩んでいる仕草を見せながら告げた。

「他の子に手を出してる写真がマジックに回った、とかじゃない?」

「それかも!あー…でもそれ凄いね。マジックにそんな手紙渡して無事な訳が…」

「あはは、確かに。」

出された推測に隆治は驚いてから言葉を続けるが、光は彼が告げた予想に対して可笑しそうに笑う。

「でもラッパッパを彼女にするとか命がいくつあっても足りないよなぁ、絶対。…彼女にする人の気が知れないよ…」

その後深刻そうな表情を浮かべながら隆治は話を続けていくが、そんな彼を光は何か言いたげにまじまじと見つめた。

「えっ?何?」

「あははっ!何でもない、何でもない。」

光が誤魔化すように笑って話題を断ち切ると、やがて2人は校舎へと着く。
2人は女子生徒に気を付けるように辺りへと然り気なく視線を向けながら、ひたすら前に足を進めていった。

「でも、見た事ある?ソルト。…普通に校舎内徘徊してるらしいけど。」

「無いなぁ…ひょっとして男子が嫌いだから男子の居る場所には来ないんじゃない?」

隆治の問い掛けに光は簡単に答えるが、やがて隆治が居る方向から鞄を落とした音が聞こえる。

「隆治くん?」

彼の方向を見ると、隆治は真っ青になりながらとある方向を指差していた。
その方向へと光が目を向けると、掌で鉄の玉をくるくると回している1人の人物が目に入る。

「あなたが…藤宮光。」

「だとしたら?…学園のテッペンに名前を覚えて貰えるなんて光栄ですね。」

その女子生徒から名前が呼ばれると、雰囲気で感じ取った光は相手がソルトである事を確認するように告げる。

「…光、素直に謝った方が…」

「…謝る事は無い。」

会話が聞こえないながらも目を付けられている事に隆治は横から口を挟むが、遥香は視線だけで横やりを入れる彼を黙らせた。

「音楽室に入ってた男を失脚させたのは…あなた…?」

「僕に、そんな力があるように見えますか?」

相手を確かめるように眺めながら遥香が尋ねると、彼はいつもの余裕を崩す事無く笑いながら返答をする。

「…のーんびり眠る事が出来るようになった礼が言いたかった…けどあなたが違うと言うなら違うんだろう。」

光の言葉を聞くと、遥香は表情を変える事無く静かに言葉を続けていった。

「…そういう事にしておこう。」

「ありがとうございます。」

「私の退屈…少しはまぎらわせて。…あなたも…転校生も。」

相手の口から礼を聞くと、遥香は小さく笑ってからそれだけを言い残してその場から離れる。

「光、大丈夫!?」

「あのオーラ…ふふ、僕の計画は上手くいったんだ…」

「…光…?」

遥香が居なくなった事により隆治は相手を心配するように告げながら近付くが、彼はぼんやりと遥香の背中を見ながら呟いた。

「ごめんごめん!何だっけ?…あ、なんか転校生来るらしいよ!」

「転校生?」

呼び掛けられて我に返った光が聞いた情報を口にすると、隆治は訳が分からないように首を傾げながら繰り返す。

「うん、さっきソルトがポロッと言ってたから。」

「ポロッと言ってたって…何言われたんだよー!」

明るく告げながら光は足を進めていくが、その内容を受けて気が気では無くなった隆治は相手の背中をすぐに追いかけた。

こらるめんて ( 2015/10/14(水) 01:20 )