§第1章§
02
「はぁ…はぁ…はぁ…」

倒れ込み息を整える姿や肩で息をしている姿がある中、光は涼しげな表情を浮かべながら彼女らを眺めていた。

「もう、気は済んだかな?」

「なんで…当たらねぇんだよ…」

「こっちは…5人だぞ…」

ようやくそれぞれが立ち上がると、彼に不満そうな視線を向けながら戦意を喪失したように告げる。

「取り敢えずさ、みんなのお名前聞いて良いかな?呼び名が無いとやりづらいしさ。」

光に促しを受けて不満そうな表情を浮かべるが、やがてそれぞれが自己紹介をした。
彼小さく相槌を打ちながら聞いていたが、全員の名前を聞いてからにこりと笑みを浮かべる。

「ありがと。…あ、1つ試さなきゃいけないか。」

「…何だよ、今度は。」

礼を告げた後に光が小さな声で呟くと、ウオノメと呼ばれる高橋朱里は呆れたように問い掛ける。

「ちょっと待ってて。自慢したい事があるんから。…あ、ウオノメちゃん。」

「…何だよ?」

「…あの時は、ありがと。」

声を掛けられて朱里は疑問を口にするが、急に礼を告げられると驚いた表情を浮かべた。
一時的に光がその場から離れてから、残りの4人が朱里の元に訪れた。

「おい!ウオノメ!お前、知り合いなのかよ?」

「馬鹿言うな!…初対面だよ。」

4人は朱里へと問い詰めるが、彼女はそれに一喝して黙らせた後に小首を傾げるようにしながら静かに答える。
その後、消えた方向から足音がすると5人はそちらに目を向けた。

「自慢…って何だろうな?」

「さぁな。何があっても流してやれば良い。」

「実はそんな大した事じゃ…!」

問い掛けてくるジセダイこと向井地美音に朱里は呆れたように答える。
美音は言葉を続けようとするが現れた姿を見て、彼女だけではなく他の4人も息を飲む。

「アンタら…こんな時に集まって何してるん?」

「お…お、お…おたべ!?」

不敵に笑う相手の姿を見て、5人からは怯えた様子で彼女の名前が呼ばれた。

「…まさか…あの光とか言う奴の自慢って…」

「おたべの…彼氏って事か…!?」

クソガキこと大島涼花と美音はチラチラと様子を伺いながら、相手に聞こえないように小声で言葉を交わす。

「そこ、何こそこそ喋ってるん?」

「な、何でもありません!」

それに気付かれて指摘を受けると、2人は完全に萎縮をした様子ですぐに返事をした。

「…ヤバイぞ…ラッパッパに負けたのは伝わったのは勿論…」

「ラッパッパの彼氏に手を出したって事は…」

「こそこそ喋るなって、聞こえへんかったん?」

罰の悪そうな表情を浮かべながら涼花が言うと美音は思わず返事をするが、5人の前に立つ相手はにこりと笑いながら再度問い掛ける。

「す、すみません!ごめんなさい!」

「…良かったぁ…秘密基地もバレて無かったし、これもまだ使えるみたいだし。」

「…おたべさん?」

2人に代わり朱里が謝罪をするが、様子がおかしくなった相手に彼女は問い掛けるように名前を呼んだ。
その次の瞬間、おたべが居た位置に先程居なくなった筈の光が姿を現す。

「じゃじゃーん!…びっくりした?」

「光…!?えっ…嘘だろ…?今のは絶対におたべの…」

ふざけた様子で光が告げると5人は唖然とするが、朱里が絞り出されたような声で呟いた。

「たまたま廊下でちらっと見ただけだったけど、やっぱり彼女もラッパッパかぁ…本当のおたべだったらスカジャン着てるでしょ?」

淡々と話される光の説明に彼女らは納得するが、未だに目の前で起こった光景が信じられないといったように5人は沈黙を貫く。

「お前は一体…」

「僕に負けた事、内緒にしてあげるから…この事は内緒だよ?」

何とか声が出るようになったドドブスこと加藤玲奈が尋ねると、光は悪戯に笑うようにしてからその場を立ち去った。

こらるめんて ( 2015/10/11(日) 23:26 )