§第1章§
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「お帰りなさい、りゅーくん。」

「頭痛い…あんまり嬉しくない言い方だね。…そもそもこんな面倒な事になったのは光のせいだし。」

光からの言葉にはむすりとして返答をしながら、負っている傷を確認するように自らの身体を見渡す。

「でも…ここを切り抜けるのが先かな。」

「あははっ、思い出すなぁ…こうやって共闘したのは学校制圧の…」

「言わないでくれる?…あんまり思い出したくないんだよね。」

開き直ったように告げた彼に光は笑いながら言葉を付け足そうとするが、隆治は少し怒った様子で即座にその会話を断ち切った。

「なんだよ…お前ら弱いんじゃねぇのかよ!」

「強い、の基準が分からないけど…今のうちに倉庫から出たい子は出ても…」

「舐めた事言ってんじゃ…」

まだダメージを受けていない女子生徒が声を上げると、隆治は説得しようと穏やかに告げる。
その訴えに耳を貸す事無く彼女が隆治との距離を詰めるが、彼は即座にその勢いを使って彼女を床へと倒れ込ませた。

「親切心のつもりだったんだけど。 」

呆れたように隆治が言うと、それを合図に囲んでいた女子生徒が2人に向かってくる。

「相変わらず鮮やかな手捌きだなぁ。」

「そんな事言って避けてる暇あったら…1人くはいは…無力化して欲しいけどっ…!」

攻撃をかわし続けながら余裕そうに光が告げると、隆治は動きを止めた生徒の背中を別の生徒目掛けて勢いよく押すようにしながら答えた。

「潰せ!…絶対に潰せ!」

「りゅーくん、まだ動ける?」

「動かなきゃいけないんでしょ?…どうしようも無いもん。」

1人また1人と倒れていく生徒を見て、リーダー格である人物は発破をかけるように声を上げる。
それを見た光はニヤリと笑いながら隣の相手に問い掛けると、隆治は小さく溜め息を吐いてから諦めたように答えた。

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「ば…化け物が…」

自らを除いた全員が床に横たわっている現状に、リーダー格の人物は後ずさるようにしながら声をもらす。

「酷いなぁ…化け物だとしても僕は違うよ。ほとんどやったのは…」

「光が避け続けてただけでしょ!…体力があるなら今からでも…」

「うらぁー!」

光の言葉に反論してから再度説得をしようとするが、最後の1人になった彼女も隆治目掛けて駆け出した。

「…言っても聞いて貰えないのか…」

隆治は小さく息を吐いてから、距離が縮まった瞬間に寸勁を放つ。
気を失った彼女をゆっくりと床に横たえるようにしてから、隆治は視線を光に向けた。

「で、どこの奴らかは調べついたの?」

「うーん…みんな制服ばらばらだからなぁ。あるとするなら…激尾古の誰かが絡んでるとしか…」

彼の言葉を聞いて何か思う所があったのか、隆治は無言のまま腕を組んで静止する。

「…りゅーくん?」

「あっ、何でも無いよ。…じゃあ。」

名前を呼ばれると、簡単に返事をしてから隆治はその場を離れようと倉庫の出口に足を進めた。

「待って待って!…記憶が戻ってる事がバレたらマズいんだって!」

「…分かってるよ。でも一緒にいる意味は…」

「今まで一緒にいたのに?」

光の意見に対して何も反論出来ないと悟ったのか、隆治は今日一番の大きな溜め息を吐く。
その後2人は扉の前に足を進めると、協力して閉まっていた扉を開けた。

「肩くらい、貸してあげるよ。」

「良いよ、自分で歩けるから…」

「もー、りゅーくん遠慮しないでよー。」

悪戯っぽく告げられた内容に隆治は迷惑そうに告げてから距離を取るが、光は楽しそうに笑いながら彼との距離を詰める。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

「少しは退屈しのぎになる期待…させてもらおうか。」

その少し離れた場所で倉庫前の様子を伺っていたのか、島崎遥香は掌で2人の鉄の玉を回すようにしながらのんびりと呟いた。

こらるめんて ( 2015/10/08(木) 17:28 )