§第1章§
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「なんでゲキカラちゃん真面目に…!…隆治くん、ちょっと走れる?」

「えっ?」

光は話を続けようとしていたが何かに気付くと、隆治に一声掛けてから突然駆け出した。

「痛たたた…光何を…」

「追われてる。…ひょっとしたら囲まれたかも。」

古い倉庫の中に2人は足を踏み入れると、物陰に身を隠すようにしながら倉庫の入口の様子を伺う。

「…まさか隆治くんが連れてきたって訳じゃ…」

光が隣の相手に声を掛けようとした瞬間、何者かによって倉庫の入口が閉められた。

「…バレた?そんな訳が…」

「いやいやいや…流石に馬鹿過ぎるだろ。」

「何の苦労もしなかったな。」

突如閉まった入口を光が確認しに向かおうとするが、それとほぼ同じタイミングで制服がそれぞれ異なる女子生徒が倉庫内に姿を現す。

「ひ、光…?」

「あーもう、分かってるよ。…これはこれは。大層なお出迎えどーも。」

「聞いたか?お出迎えだってよ!」

隆治は怯えた様子で物陰から声を掛けると、光はため息を吐いてから悪戯っぽく自分達を囲む相手に笑い掛ける。
それを受けた女子生徒の1人がからかうように告げると、彼女達からも笑い声が上がった。

「それで?誰からお願いされたのかな?」

「は?喋る訳ねーだろ。」

「ふーん、お願いされたんだ。」

集団をまとめているであろう相手に問いかけると、彼女は冷笑しながら答える。
その回答に光はニヤリと笑いながら言葉を続けた。

「てめぇ…今の状況分かってんのか!?」

「分かってるよー。20人位に囲まれて、こっちは怪我人1人でしょ?」

鎌をかけられた彼女が怒りに声を震わせるようにしながら言うと、光は状況を整理するように見渡してから答える。

「大ピンチだね。 」

「随分と余裕じゃねぇか。」

わざとらしく困ったように光が告げると、その場にいた女子生徒は戦闘の構えを取った。

「隆治くん、これ。」

光はため息を吐いてから、隆治に向かってペットボトルを投げ渡す。

「…水?」

「とりあえず、1回落ち着いて。…確実に隆治くんもただじゃ済まないから。…僕1人で隆治くん守るのも限界があるんだよね。」

「何ごちゃごちゃ言ってんだよ!」

突然水を渡された事に困惑する彼に光は説明をしていたが、痺れを切らした1人の女子生徒が光に殴りかかった。

「あはは。悪いけど、僕は優しくないから当たってあげないよ?」

「てめぇ…」

それをかわして余裕そうに告げた彼を見て、光に殴りかかった女子生徒は悔しそうに歯噛みする。

「じゃあコイツの方はどうかな!」

「あっ!」

不意を突いて別な生徒が隆治へと殴りかかると、拳が直撃した隆治は糸の切れた人形のように棒立ちになった。

「立ったまま気失ってんじゃ…ねぇか!」

動かない彼を再度殴りつけると、その勢いで隆治は数歩後退するが棒立ちのまま倒れない。

「いい加減…これで…!」

振り上げた3度目の拳が降り下ろされた瞬間、その女子生徒の身体が宙に浮いた。
その宙を舞った身体が床へと叩きつけられると、彼女は痛みに表情を歪ませながら隆治に視線を向ける。

「き、聞いてたのと違うじゃねぇか…弱い奴ボコるだけじゃねぇのかよ…」

「そっかそっか。飲んだんだね、水。」

混乱する声が上がる中で口の空いたペットボトルを見つけた光が笑いながら告げると、隆治は女子生徒らに向けて拳を握り締めた。

こらるめんて ( 2015/10/08(木) 17:27 )