§第1章§
09
「なんでいっつもこんな目に…」

「仕方無いよ、これが僕たちの立場なんだから。…このやられ方はひどいけどね。」

隆治の応急処置を施してから、2人は帰路へと着く。
その際に隆治が不満そうに呟くと、彼へと肩を貸しながら歩く光は同情するように答えた。

「…あっ。」

「痛たた…急に止まったら痛いじゃん!」

何かを発見した光が突如足を止めると、突然の相手の行動によって隆治の傷だらけの身体に痛みが走る。

「隆治くん、君が特異体質なのか何なのかしらないけどさ…」

「…何?」

「…これは偶然?」

告げられた内容に隆治は訳が分からない様子で首を傾げるが、やがて光が見ている方向へと同じように視線を向けた。

「…何ですか?」

長い黒髪を揺らしながら歩いていた少女は向けられた視線が気に気が付いたのか、彼らの前で足を止めると2人に目を向けながら尋ねる。

「いえ!何でも、何でも無いです!」

「…なそうですよ?」

先程の事があった為か、隆治は深々と頭を下げるようにしながら必死に謝罪をした。
それを見た光は視線を隆治から足を止めた相手に移すと、半ば呆れたように告げる。

「…それなら、良いんですけど。…失礼します。」

それだけ告げると、彼女は隆治達を交互に見てからその場を後にした。
その後ろ姿を見送ってから、光は安心したように大きく息を吐く。

「はぁー…流石の僕もひやひやしちゃった。」

「…なんで?…まさか、有名な…」

光の様子から先程の少女に恐れを抱いたのか、隆治の表情に恐怖の色が浮かんだ。

「あれ?…そっか。…誠もこればっかりは怖がったのかな。全部消されちゃってるなんて。」

「…え?」

納得したように光が小さく呟くと、隆治は話に着いていく事が出来ていない為にか疑問の声をこぼす。

「いや何でも無い何でも無い。」

「光、最近それが多いよ。」

またもや同じように彼がはぐらかすと、流石の隆治もわずかに怒るような声色で返答をした。

「隆治くんさ、今さっきの人知ってる筈だよ?」

「僕が?今の人を?」

にこにことしながら告げた光の言葉に驚きの声を上げてから隆治は思い出そうとするが、やがて小さく左右に首を振る。

「…駄目だ、心当たりが無いよ。」

「そっか、やっぱり全く心当りは無いんだね。」

光はもう1度小さく笑うと、少女が去っていった方向に視線を戻した。

「今の子、松井玲奈ちゃん。通称ゲキカラ。…元ラッパッパの1人だよ。」

こらるめんて ( 2015/10/08(木) 17:27 )