§第1章§
07
何度も鋭い視線を受けながら、菜々と隆治は放課後の激尾古高校の校舎内を進んでいく。

「あの、あんまり他の学校に…」

「あーもう、煩い。黙って着いて来ればええねん!」

申し訳なさそうに隆治は告げようとするが、菜々はどこか苛立ったように答えながら足を前に進めていった。

「ここや。」

「ここは…何?」

「良いからさっさと入りや!」

ドアを開けてから、菜々は隆治の背中を押すようにして強引に室内へと放り込む。
その室内に居た全員の視線が、突如現れた隆治へと突き刺さった。

「アンタ、ここの生徒ちゃうな。」

「ふふふ、だって制服ちゃうもんな?」

愛用している椅子に座りながら部屋に入ってきた隆治へと彩が告げると、美優紀もそれに続けて言葉を発する。

「まぁまぁ、2人とも落ち着き。」

「またアンタかいな。…なんやねん、ほんまに。」

隆治が部屋に入ってから少し遅れて菜々が姿を現すと、彩は少し面倒そうな様子で声を掛けた。

「2人とも、この男知ってるやろ?ほら、みるきーに関しては…」

「みるきー?」

菜々は話を続けていくが、呼ばれた愛称にピンと来ないように彩と美優紀の2人は顔を見合わせる。

「ああ、面倒やなっ!こびーに関してはただならぬ仲やったんやで?」

「ただならぬ仲?…ふふふ、この男の子とどんな関係やったん?」

声を上げた菜々の言葉に美優紀はどこかおかしそうに笑いながら、ゆっくりと隆治に歩み寄った。

「そ、それは…橘隆治のを…もう、言わせんとって!」

真っ赤になった菜々の反応を見て、美優紀はより一層楽しそうな笑みを浮かべると隆治の前で足を止める。

「なぁ、ウチとジャブジャブしてみる?」

「じゃぶじゃぶ…?」

隆治が疑問を持ったように復唱した途端、美優紀は彼の頬を思い切り張った。
不意を打たれた隆治は体勢を崩してその場に尻餅をつく。

「こんな奴…ぜんぜん興味ないわ。」

「アカンで、それ以上は。」

美優紀が告げながら振り上げた手を見て隆治は思わずぎゅっと目を閉じるが、彼女の行動を彩が制した。

「どうしたん?このままやったら…」

「コイツの制服、どっかで見たと思ったら馬路須加学園の制服や。…そうやな?」

美優紀の不満を遮って彩は彼に尋ねると、隆治は半ば呆然としながらも小さく頷く。

「今あの学園に手出して揉めるんは賢明やない。」

「あの学園の事やんか。男の子がボロボロなんは日常茶飯事やろ?」

自らの行動を止められて不満だった為か、美優紀は僅かに頬を膨らませながら反論した。

「仮に、コイツがラッパッパの彼氏…やったらどうするん?」

「そんな、こんな弱い奴にラッパッパは…というか興味持たんやろ?」

美優紀とは対称的に彩が落ち着いて告げられて、彼女は冷笑すると隆治から離れる。

「…これでさや彩の攻撃に着いてこれた、なんて言えへんよなぁ…」

そのやり取りを見ていた菜々がぽつりと呟くと、それを聞き逃さなかった彩の視線が相手を捉えた。

「アンタ、今何ていった?」

「いや、何も。何も言ってへんよ?」

何か良くない事が起ころうとしていると察したのか、菜々は必死に手を振りながらも彩を説得しにかかる。

「そこまで言われたら黙ってられへんなぁ。…アンタ、何か隠してるんちゃうん?」

「そんな!隠す事なんて何も…」

にやりと笑みを浮かべた彩から告げられると、隆治は数歩後退るようにしてからちらりと時計を見た。

「も、もう遅いから僕帰った方が…」

「時間なんて気にせんでええで。…今からゆっくり話、聞いたるからな?」

部屋の出口に向かって隆治はゆっくり後退していくが、それを阻むように美優紀が彼と扉の間に立ち塞がる。
逃げ場を失った隆治が再度彩へと視線を向けると、彼女は得意気に笑いながらこれからの準備をするかのように指を鳴らした。

こらるめんて ( 2015/10/08(木) 17:26 )