§第18章§
03
「この写真はなんなん?」

部屋に入ってきた光が机に置いた数枚の写真を見て、そのうちの1枚を手に取りながら由依が彼に尋ねる。

「今から説明するね。説明するから、今にも飛びかかってきそうなゲキカラちゃんを宥めてくれないかな?」

質問に対して答えようとするが近くにいる人物から鋭い視線を受けている事に気付くと、光は小さく笑いながら隆治へと依頼した。

「玲奈、一応ほら……彼も被害者だし。」

「関係ない。」

小さく息を吐いてから隆治は玲奈へと言葉を掛けるが、彼女は視線の先に光を捉えたまま即答する。

「今は光の手を借りなきゃ……」

「関係ない。」

頑なに拒否をする彼女を見て隆治は困ったように頬を掻きながらもう1度説得しようとするが、再び彼女によって一蹴された。

「じゃあ……後から一方的に殴れる機会作ってあげるから……」

「……分かった。」

「それで分かられても困るんだけどなぁ。」

行き詰まったように暫く腕組みをした後に玲奈へと提案すると、彼女は仕方無さそうに受け入れる。
その2人のやりとりが面白かったのか、身の危険を気にする様子もなく光はくすくすと笑った。

「さて、説明するね。ここが矢場久根が指定してくる場所だよ。使われてない学校みたいだけど、建物の出入り口はこの正面玄関だけみたいだね。」

話を一区切りさせ、光は写真の1枚をつまみ上げると全員に見えるように動かしながら説明を始める。

「窓からは入れないの?」

「良い目の付け所だねゾンビちゃん。でも全部の窓に頑丈な面格子を付けてるから無理だね。」

口を挟んだ南那へ人指し指を立てて答えるようにしてから、窓の様子が写った写真を全員に示した。

「場所は分かった。人数は?」

「かなり多いはずだよ、人海戦術を使ってくるはず。1つしか無い玄関からなだれ込まれて蓋されちゃったやジリ貧、ゲームオーバーって感じかな?」

手のひらに拳を打ち付ける動作を繰り返しながら李奈が尋ねると、手にしていた写真を机の上に戻しながら光はさらりと答える。

「なぁ、気になったんだけどよ。どうやってこれ調べ上げた?……まさか……!」

「ふふ、メッシちゃん多分ハズレ。こんな時の為に敵の内部に内通者は持っておくべきだよ?」

流石に詳しく調べている事に違和感を感じた朱里が尋ねようとするが、初めに会った時の事を思い出しそれを口にしようとする。
しかしながら咄嗟にそれを遮るように光が説明をすると、どこか納得いかない様子ながらも小さく頷いた。

「激尾古の腕立つ奴ら足しても人数足んないんじゃ……」

「しかも先に用意してるんだろ?なんか罠とか……」

「ふふっ、あるかもしれないね。」

光の説明を聞いて美音と奈月はヒソヒソと言葉を交わすが、聞き逃さなかった光は悪戯っぽく笑う。

「お前らそんな弱気になって……!」

「バカモノ。」

同じくそれを聞いていた李奈も怒鳴ろうとするが、今まで目を閉じて話を聞いていた遥香が目を開けた事に気付いた由依によって制された。

「藤宮光。他になにか話しておくことはある?」

「ううん、これで全部だよ。」

「これで全部……そう。」

相変わらずのトーンでひかりへと尋ねるが、彼からの返事を聞いて遥香は座っていたソファー椅子を立つ。

「ラッパッパを本気で倒すつもりの用意がこの程度なのか。」

全員が静かに遥香の動向を見守る中、誰に言うでもなく彼女は呟いてから笑みを浮かべた。

「数だけ居る連中や……小細工ごときで打ち倒されるラッパッパじゃない。」

落ち着きを取り戻し再び表情の起伏が見られなくなった彼女は、全員に告げるようにしてから自らの私室へと姿を消す。

「ソルトの言う通りや。気合い入れや!激尾古に遅れ取ったりしたら許さへんで!」

遥香の言葉に続けるように由依が勢いをつけて言うと、ラッパッパのメンバーは頷き、同意の声を上げた。

「味方で良かったよ、これほど敵に回したら怖い相手居ないだろうからね。」

「味方?ううん、あんたは私の最も憎んでる敵の1人だよ?」

「ははっ、僕の身はいつまで安全なのかなぁ。」

完全に士気が上がった彼女らを見て光が告げると、玲奈は爪を噛みながら再び彼を睨み付ける。
そんな状況にありながらも余裕があるのか、光はからかうようにウインクをしてから逃げるように部室を後にした。

■筆者メッセージ
やっとこっちも久々に更新。
こらるめんて ( 2016/07/28(木) 12:47 )