§第17章§
01
「マジで行くからな。」

「手抜く余裕なんて無いだろうが。」

息を吐いた真子が低い声で告げると、ゆりあは鼻で笑った後に立てた人差し指を曲げて挑発する。

「黙れよっ!」

挑発によって機嫌を悪くした真子は怒りを込めて攻め立てるが、ゆりあは動じる事無く1つずつ防いでいった。

「おいおい、これがお前のマジなわけ?」

「マジだよっ!」

蹴りに対して後方に引いた相手を見て、真子は咄嗟に手刀を降り下ろす。
彼女の特徴を知っている為かゆりあはかわそうとするが、彼女の頬には切り傷が生じた。

「私は咲良さんにマジを教えて貰ったんだ。あの時とは違う!」

「マジを……か。」

手刀が命中した為に真子は勢い付いたように告げてから床を蹴るが、向かってきた相手にゆりあは回し蹴りによってカウンターを行う。

「っく……」

「咲良にマジを教わったのはお前だけじゃない。教わったのは……橘くんにもだな。」

「お前なんかに……っ!」

蹴りが直撃した部位を抑えながら、真子は相手を睨み付ける。
言葉を続けるゆりあに真子は再び飛び掛かろうとするが、続けざまに蹴りを入れられると地面に膝を付いた。

「お前がちょっと強くなったくらいじゃ、ラッパッパの壁は越えられない……教えてやるよ。」

ゆりあは膝を付いている真子を見下しながら、自信ありげな笑みを浮かべた。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

「ヨガちゃん、怒り過ぎだよー。別に僕は……」

「無駄口を叩くな……構えろ。」

おかしそうに笑いながら光は対峙する相手へと説明をしようとするが、杏奈は聞く耳を持たずに構えをとる。

「あんまり直接やり合うの得意じゃなくてさぁ……」

「得意じゃなくて構わない……私から一方的にやられれば良い。」

彼女は冷たく言い放つと光に向かって駆け寄り最初の1撃を放つが、彼はひらりとそれをかわした。

「お前がっ!ソルトさんのっ!邪魔にっ!なるならっ!」

「だから、ソルトちゃんには特に……」

「煩いっ!喋るなっ!」

言葉を乗せて杏奈は拳を振るい続けるが、光は余裕そうな様子でその1つ1つを避けていく。

「百歩譲って咲良は許す……けど、お前達は許せないんだよっ!」

「ラッパッパに入る話?」

休む事無く拳を放ちながらも杏奈が怒鳴るように告げた内容に光が答えると、杏奈は驚きの為に一瞬目を見開き動きを止めた。

「ふふ、足が止まったね。」

光はくすりと笑うとその隙を突き、杏奈へと足払いをかける。
それを受けた杏奈は転倒しそうになるが、その身体を光に支えられた。

「ね?僕達が勝負する意味は無いんだから……」

「どこまで侮辱する気だ……私を……」

説得しようとする彼の言葉にも耳を貸さず、杏奈は相手を睨み付けてからすぐに距離を取る。

「うーん……どうしても納得出来ない?」

「するものか。」

暫く考えるようにしてから光は彼女へと尋ねるが、杏奈は鋭い視線を向けたまま答えた。

「そっか。じゃあ、ちょっとだけやるしかないね。」

「やっとやる気になったみたいだな。」

小さく息を吐いてから光が意を決したように言うと、杏奈は再び彼に向けて構えを取る。

「まぁ、どっちにしろ知っといて貰わなきゃいけないしなぁ……」

「何ぶつぶつ言ってん……だよっ!」

小さく呟く相手を見て痺れを切らしたのか、杏奈は光が動く前に再び先手を取って拳を降り下ろした。

「相変わらず避けてばかりじゃ……っ!」

自らの視界の外に逃げた光に不満そうに告げるが、背後を振り返った途端に驚きの余り言葉を詰まらせる。

「どういう……ことだ……?」

「目に見えてる事を疑うのか?……まぁ良い。相手をしてやる、ヨガ。」

杏奈が呆然とする中、彼女の視線の先に立っていた遥香はにやりと笑った。

■筆者メッセージ
ラッパッパの壁は高いです。
カミソリちゃんには食らいついていって欲しいですが。
光くんとヨガは結果はまぁ……見えてますね(苦笑)
こらるめんて ( 2016/01/23(土) 23:11 )