§第17章§
10
「……覚悟しろ。」

「少しは楽しませてくれよなぁ!」

隆治の強気な言葉に興里が笑って返事をし、地面を踏み込もうとした時だった。
その場に居た誠と興里を除く人物が、突然の頭痛に襲われ頭を押さえながらしゃがみ込んだ。

「てめぇ、何のつもりだ。」

「……足が動かなくなる。」

興里は隣に居る人物の仕業である事に気付き苛立ったように言うが、誠は相手の言葉を聞き流し口を開く。

「物事には順序があります。興里さん、今この方々と拳を交える時期ではありません。」

「足が……動かない……?」

相手らが動けなくなっているのを目で確認してから誠が興里に尋ねる中で、遥香を除いた馬路須加学園側のメンバーは何とか足を動かそうと必死になっていた。

「それとも、動けない相手を一方的に殴り付けて勝利を得ますか?」

「……ちっ、相変わらず嫌な野郎だ。」

静かに告げられた誠の言葉を受けた興里は興醒めしたように舌打ちをすると、ヘリの中へと入っていく。

「さて、申し訳ありませんでした。渡辺さん。」

隆治達と同じく動けなくなっている麻友の元に誠が歩み寄り耳元で何かを囁くと、彼女の足は何事もなかったかのように簡単に地面から離れた。

「相変わらず、これは慣れないっすねぇ……」

自らを解放した相手に答えてから、麻友は玲奈の前へと足を進めていく。

「ゲキカラさん、どうっすか?今の気分は。」

必死に動こうとする相手を見て楽しげに麻友は笑うが、そんな彼女の様子に玲奈はもがくのをやめて思い切り睨み付けた。

「今動けない貴女の前で……私はりゅーじ君に好きなことが出来る。」

「絶対に潰してやる!あいつらも!お前も!」

「ふふっ。その元気が続くこと、期待してるっすよ。」

隆治が顔を背ける中で麻友が彼の頬に手を当てると、玲奈は叫ぶようにして怒りを露にする。
その姿に満足した麻友は2人にひらひらと手を振ると、興里達と同じくヘリへと乗り込んだ。

「ああ、忘れてた。」

麻友が機内に姿を消してから、入れ違いのように姿を見せた興里は思い出したように口を開く。

「俺達を追うより、優先した方が良い事があるぜ?」

「……何だ。」

彼の視野が自らを捉えている事に気付くと、遥香は比較的落ち着いた声で尋ね返した。

「お嬢ちゃんのお友達、無事だと良いけどなぁ?」

「では皆様、また会う日まで。……足を自由にして差し上げます。」

ヘリが飛び立つ直前に誠が告げて手を鳴らすと、動かなかった全員の足が解放される。
咲良と玲奈、隆治はヘリに向かって駆け寄ろうとするが、それよりも早く機体は飛び去っていった。

「あいつら……ふざけやがって……」

「玲奈、今は現状の確認が先だよ。……ソルト、興里の最後の1言は……」

「……アントニオだ。」

苛立つままに告げる玲奈を隆治は制するようにしてから遥香に声を掛けると、彼女は考える仕草も見せずに1人の人物の名前を呼ぶ。

「アントニオって……激尾古の!」

名前を聞いた咲良が思い出したように言うと、遥香は小さく頷いた。

「あいつらは私とアントニオのやり取りを知っている……狙うならば彼女としか考えられない。」

「馬路須加学園、今危機にあるの分かってる?」

室内に向かおうとする遥香の背中に向かって、少し落ち着きを取り戻した玲奈が疑問を投げ掛ける。

「勿論だ。しかしアントニオにも借りがある。それに……これ以上に敵を増やす訳にはいかない。」

足を止めた遥香はしっかりと玲奈の方へと身体を向けるようにしてから、相手の問いへと答えた。

「へぇ……優子さんと違って今のラッパッパのてっぺんは弱気だね。アハハッ!」

「他のメンバーを巻き込む訳にはいかない。私達でけりをつける以上敵を作る訳にはいかないんだ。」

煽るようにに玲奈は言うが、遥香は気に留める事もなく再び相手に背中を向けた。

「咲良、橘……ここは任せたぞ。私は今から行ってくる。」

「いくらなんでも1人じゃ……」

姿を消した遥香の後を追おうと隆治がドアに駆け寄ろうとするが、その彼の腕を玲奈が掴む。

「優子さんとは違うけど……てっぺんに立つ器なのかも……あの人も。」

先程まで嘲るようにしていた態度とは一変し、玲奈は遥香が通っていったドアを眺めながら穏やかな様子で呟いた。

■筆者メッセージ
と、まとめた感じでマジスカ学園4編は終わりになります。
マジスカ学園5の冒頭は少し掠めるかもしれませんが、実際は全くの別物になりますね。
休載を挟みますが、復帰したら5の冒頭の辺りからスタートしたいと思います。
しばし、お待ち下さい!
こらるめんて ( 2016/02/02(火) 14:17 )