§第17章§
07
「やっても、結果変わんないっしょ。」

「分かんないだろ、今日は勝つ。」

冷たく言いながらもゆりあは自らの前に立つ相手を嘲るように笑うが、真子は睨み付けるようにしながら言い返す。

「マジ、見せてやるよ!」

真子は叫びながら言うと、いつも通り先手として手刀を放つ。
回避するべく身を反らしたゆりあであったが、腕の辺りに切り傷が生じた。

「面倒なんだよね、それ。」

不機嫌そうにゆりあは言いながら蹴りを放つと真子はそれを受け止めるが、勢いを止めきれずに尻餅をつく。

「いい加減さあ、諦めてくんない?私に勝つことも、橘くんの事もさ!」

「りゅーくんが、どうしたの?」

尻餅をついている真子に向かって蹴りを放とうとした瞬間、割って入った声にゆりあは動きを止めた。

「……この声って……」

「見えないとこから声かけてんじゃねぇよ。出てこいよ!」

何かを察した真子は小さく呟くが、邪魔をされたゆりあはより一層機嫌を悪くして姿の見えない相手へと言い放つ。

「……これで良い?」

その言葉を受け、静かな声で返答しながら松井玲奈は2人の前に姿を現した。

「何なの?勝手に邪魔しに入ってきて。」

「マジック……駄目……この人……ゲキカラだから……」

恐れる様子も見せずに苛立ちをぶつけるゆりあに、真子は恐怖の余り言葉を途切れさせながら警告する。

「ゲキカラ?ああ、あの有名な。初めて見た。……それが何?」

真子からの言葉を耳にすると、ゆりあは全く臆する事無く彼女へと尋ね返した。

「ふふっ、久々に面白い子見つけた。ふふふっ、私の名前聞くと、みんな逃げちゃうんだもん。あははっ!」

名前を知りながらも態度を崩さないゆりあを見て、玲奈はどこか嬉しそうに言いながら口元に指を持っていく。

「けど……あの発言は許せないかな。」

「あの発言?」

爪を噛み始めた玲奈から言われるが、ゆりあは苛々とした様子を全面に出しながら尋ね返した。

「りゅーくんの事諦めて、って……りゅーくんはあんた達どっちのものでも無いから。」

ようやく本題に入ると先程までの笑顔が嘘のように、玲奈は鋭くゆりあを睨み付ける。

「橘くんもさぁ、ピチピチの方が好きだと思うよ?オバサンはちょっと黙っとけよ。」

ゆりあは強気で言いながら強く地面を踏み込むと、玲奈の腹部に目掛けて思いきり蹴りを入れる。
避けようとしなかった玲奈の腹部へと蹴りが直撃すると、真子は思わず口元を覆った。

「ふふ……ふふふっ……アハハハハハハッ!りゅーくんに気に入られてるとか思ってるの?アハハハハハハハハハハッ!」

「……黙れよっ!」

蹴りを入れられながらも苦しむ様子も見せず狂ったように笑い始める玲奈を見て、今度は頬を殴り付ける。

「アハハッ、アハハハハハハハハ!りゅーくんが好きなのは私。たぶらかす奴は……壊さなきゃね。アハハハハハハハッ!」

拳を引いたら玲奈からの1撃をゆりあは何とか防ぐが、先程の真子のように勢いに押され後退させられた。

「面倒だなこいつ……おいカミソリ、立てるだろ。」

「はっ?」

「良いのかよ……こいつやらなきゃ、橘くんをどうしようも無いんだぞ。」

急に話を振られた真子は驚いたように返事をするが、ゆりあは目の前にいる玲奈を睨みながら言葉を続ける。

「やりたくないなら尻尾巻いて逃げろ。けど、2度と橘くんの前に顔出すなよ。」

いつでも殴りかかれるように構えを取りながら、ゆりあは様子を見ていた真子へと告げた。

「そんな事言われたら……や、やるしかないだろ!」

「それでこそラッパッパだ。」

決心したように真子は息を吐いてからゆりあの横へ行くと、彼女は隣に来た相手を目だけで見てからニヤリと笑う。

「ラッパッパ……?あなた達、ふざけてるの?」

狂ったように笑っていた玲奈であったが、ゆりあの1言を聞くと笑い声が収まった。
その後玲奈の様子が一変し、再び落ち着いた声で2人に問いかける。

「ふ、ふざけてんのはそっちだろ!」

「良いぞカミソリ。……さっさと始めない?お喋りはいいからさ。」

緊張した面持ちながらも煽るような発言をした真子を賞賛してから、ゆりあもまた玲奈の痺れを切らせるように口を開いた。

「私はりゅーくんの為にラッパッパを手放さなきゃいけないって、こんなにもこんなにもこんなにも!……苦しんでるのに……」

2人の発言を受けてから、玲奈は私選を下げて俯き気味になりながら感情のままに声を上げる。

「お前ら……ぶっ潰す。」

握り拳に力を込め、やがて顔を上げた玲奈は再びゆりあと真子を睨み付けながら冷淡に宣告した。

■筆者メッセージ
はい、お待たせ致しました。
いよいよいらっしゃいました。
しかも、最悪な現場に。
こらるめんて ( 2016/01/31(日) 05:55 )