§第17章§
04
「あっ……と。」

先に露天風呂に居た隆治は、ドアの開く音がした為に反射的にそちらに目を向けてしまう。
待っていた人物が目に映ると、彼は思わず声をもらした。

「やはり男だな。そんなに見なくても良いだろ。」

「あっ、ごめんなさい!白くてモチモチ……じゃなくて!かなり細かったから……」

小さく笑う遥香に指摘されると、我に返った隆治は慌てて弁解の言葉を口にする。

「細い?」

「細いのに、強いんだなぁって。」

相変わらず目を合わせる事無く遥香に尋ねられると、隆治も背中を向けるようにしてからそれに答えた。

「そんなもので強いか弱いかなんて決まらない……橘も分かると思うけどな。」

「えっと、まぁ……はい。」

必然的に隆治の頭の中には以前ラッパッパの四天王を務めていた最愛の人物が浮かぶ。
しかしながら現在の状況を見られてしまうとどうなるかという推測が容易に想像出来た為か、隆治はその考えを振り払うように左右に首を振ってから答えた。

「それで、なんで僕とこんな所で話を……」

「藤宮からの勧められた。場所はどうだって良い、聞きたいことがある。」

疑問を抱いている彼からの問いに答える意思を見せず、遥香は話を進めていく。

「矢場久根の連中が宣戦布告をしてきたのは知ってるな?」

「勿論。たしか来年の春に来る、だったかな?」

遥香の問いに隆治は小さく頷くと、学園内で噂になっていた事を思い出すようにしながら返答する。

「あれを裏で手引きしてるのは虎徹……つまりお前の父親だ。」

知っている筈の無いことを遥香が簡単に口にした為に、隆治は驚きの余り動きを止めた。

「なんでそれを……」

「理由はどうだって良い。……やれるのか、父親と。」

彼女がその事を知った経緯をいくつも推測しながら隆治は尋ねるが、再び遥香は彼からの問いに答えずに尋ね返す。

「僕は……父親を本気で殴る覚悟はあるよ。仕返し、じゃないけど……とにかく、本気で立ち向かう覚悟はある。」

暫く口を閉ざした隆治であったが、深く呼吸をして自らを落ち着けた後にその決心を口にした。

「それを聞いて安心した。……貴方も馬路須加学園の戦力としてしっかり数えさせて貰う。」

「え、いやいや!僕は……」

「おたべから聞いた。」

遥香の言葉を否定しようとするが自らと手合わせをした相手の名前が挙がると、隆治は誤魔化す事が出来ないと察した為か諦めたように小さく息を吐いた。

「……まだ力を隠しているだろう。」

「えっと……ソルトなら、1人で解決する、なんて言うと思ったけど。」

どうにか自らの技量を探ろうとする内容から話をそらそうと、隆治は思い付いた内容を迷わずに口にする。

「昔の私ならそうかもしれないな。ただ……学園に思う所がある奴が相手にいるなら、私1人で相手をするわけにもいかない。」

「なんか、ソルト……雰囲気が柔らかく……」

彼女が告げる以前のイメージとは異なった考え方に隆治が思わず呟くと、彼の後頭部に遥香の手が置かれた。

「喋りすぎだ。」

「痛い痛い痛い痛い!」

抑揚無い声で遥香が言った後に手へと力が加わると、隆治は逃げるように背中を向けたまま彼女との距離を開ける。

「私も……咲良やおたべ達に影響を受けたのか……分からないな。」

自らに問いかけるようにしながら遥香は呟くと、室内に戻るべく立ち上がり浴槽内の石段に足をかけた。

「1つだけ、答えてやる。」

音で立ち上がったのを察した為に誤解を受けないよう背中を向けたまま固まっていた隆治であったが、そんな彼に再び遥香の声が届く。

「この場所を選んだ理由だ。貴方が私を見ないようにする……だから、話す事に集中する。……私が聞きたかったのは橘の本心だ。」

「……そういう事か……」

場所について淡々と彼女から説明を受けると、隆治は納得したように良いながらも苦笑いを浮かべた。

「学園に帰ってもまだ隠し通すつもりか?」

「あんまり、男の子が目立っちゃいけない風潮を崩す訳にはいかないから……」

「……お前らしいな。」

彼女の問い掛けに対して、隆治は頷いてから迷う事無く答える。
そんな彼に遥香はどこか納得したように穏やかに告げると、扉を開けて室内へと戻っていった。

■筆者メッセージ
拍手、コメント下さった方ありがとうございました(礼)
サービス?
そんな物ありませんよ(笑)
こらるめんて ( 2016/01/26(火) 22:27 )