§第16章§
03
「しかし、なんか嫌だなぁ……この空気。」

前回と同じく光が用意したバスをしようしているものの、車内の会話はほとんど無く沈黙が続く。

「というか、平日に学校休んで良いのかな?僕達は良いとしても……」

「心配してくれてんの?」

光へと小声で話していた隆治であったが、その声を聞いたのかゆりあがにこりとしながら声を掛けた。

「私らも潰さなきゃいけないんだよね。」

「潰す?何を?」

「出席日数、だよね?」

説明を始めたゆりあに対して隆治は尋ねるが、彼女に代わって光が人差し指を立てながら答える。

「勝手に会話に入ってくんじゃねぇよ、黙ってろ。」

「うわー……露骨!怖い!」

光の言葉にゆりあは目付きを変えて冷たく言い放つと、彼はわざとらしく怯えたように反論しながら窓の外へと目を向けた。

「ったく……まぁ、そいつの言う通りだ。ソルトさんが入院とかで日数が足りなかったから……私らもそれに合わせるんだ。」

暫く光を睨み付けていたが、どうにか機嫌を直したゆりあは説明を再開する。

「そっか。四天王のみんな、本当にソルトさんを慕ってるんだね。」

「橘隆治。」

隆治が納得したように告げると、後方の座席から彼の名前を抑揚の無い声が呼んだ。

「ソルト……さん?」

「何故敬称をつけるの……?」

驚きのあまり言葉を詰まらせながら隆治は返事をするが、対照的に遥香は淡々とした様子で尋ね返す。

「それは、ラッパッパの皆さんは学園でも……」

「上辺だけの理由はいらない。」

彼はなんとか答えようとするものの、遥香は小さく笑うようにしてそれを遮った。

「藤宮光……私を何と呼んでる?」

「ソルトちゃん。」

話題が振られた際にも動じる事無く、そして恐れる様子も見せずに彼女の問いへと答える。
隆治は口元をおさえ、杏奈は思わず立ち上がりそうになるが由依によって宥められた。

「橘隆治。お前からも始めは畏怖を感じている様子があった……しかし今はそれが見られない。」

遥香から告げられた言葉に隆治は呆然としていたが、光はくすくすと笑ってから彼女の方を見る。

「分かっていると思うけど……私達が相手にする連中は手を抜いて勝てるほど甘くはない。」

「うん、そうだね。」

遥香からの言葉で相手がそれなりの事態を把握している事を察したのか、隆治も真剣な様子で相槌をうった。

「じゃあ、もう話して良い?」

「えっと……そうだね。」

以前彼の実力を少し見たゆりあが尋ねると、隆治は暫く考えるようにしてから許可を出す。

「ふふふ、話したくて仕方なかったんだよね。おたべ!おたべは実力疑ってるけどさー……」

許可を得たゆりあは、にこりと上機嫌そうに笑ってから由依の側へと移動をした。

「咲良。」

「はい、何ですか。」

由依とゆりあのやり取りを見ていた遥香は暫くすると、光の提案により座席を隣に配置された咲良へと声を掛ける。

「咲良は見たことがあるの……?橘隆治の本気。」

「何度か相手はして貰いました。けれど……本気は見たことがありません。」

尋ねられた内容に、咲良は彼に手合わせをして貰ったことを思い返しながら答えた。

「私は拳を交えても貰えなかった……羨ましいな。」

「えっ……?」

相手が最後にぽつりと漏らした言葉に、咲良は思わず尋ね返す。

「何でもない……忘れてくれ。」

遥香は目を閉じて寝る体制に入りながら、隣の相手に静かに返答をした。

■筆者メッセージ
拍手、コメント下さった方ありがとうございました(礼)

バスの中が殺伐!
ラッパッパとチーム咲良が乗り合わせているので当然ではありますが。
そしてソルト、デレる。
こらるめんて ( 2016/01/21(木) 21:44 )