§第14章§
03
「なかなか成長してるじゃねぇか……少し驚いたぜ。」

「橘さん!」

「僕は、大丈夫だから……」

どこか嬉しそうに虎徹が言う中で咲良が隆治に声を掛けると、彼はなんとか自力で立ち上がる。

「俺に1撃与えた褒美だ、俺からは記憶戻ってる事は黙っといてやるよ。これから忙しくなるだろうしな。」

「待て!まだ私が……私がいる!」

「おいおい、お嬢ちゃん……馬鹿なのか?」

くるりと踵を返して立ち去ろうとする虎徹へと咲良が声を上げると、彼は苛々としたように咲良に答えた。

「お嬢ちゃんのてっぺんあるからそいつは庇ってたんだぜ?まあ、それを無駄にするかどうかは自由だけどよぉ。」

背中を向けながら告げる相手の言葉に言い返す事が出来なくなったのか、咲良は握り拳に力を入れながら去っていく背中を睨み付ける。

「橘先輩!」

「橘さん……ごめんなさい、私が……」

「僕は大丈夫だから……ね?」

相手の姿が見えなくなった後に真子は悲痛な声を上げ、咲良は申し訳無さそうに謝罪をするが、隆治は弱々しく笑いながら答えた。

「それで……さっきのあいつ……虎徹……さんが……」

「宮脇さん、憎いんでしょ。……気、遣わなくて良いよ。……僕も嫌いだから。」

相手の父親と知った為か咲良は言葉を選びながら告げるが、隆治は苦笑いしながら言う。

「……虎徹が言ってた事は……」

「残念だけど……本当。虎徹……本名は橘興里。」

再度咲良が尋ねると、隆治は小さく頷いてた後に静かな声で説明を続けていった。

「少なくとも僕の技術はあの人の影響がある。……悔しいけどね。だから、宮脇さんが目的を果たす手掛かりにはなるかもね。」

「良いんですか?」

「……何がかな?」

淡々と行われる彼の話に耳を傾けていた咲良であったが、彼女がふと口にした言葉に隆治は首を傾げて尋ね返す。

「嫌いかもしれないですけど……」

「父親、って事だよね。……けど、宮脇さんにも何か酷いことをしたんだ。その償いくらいはして貰わなきゃ。」

咲良の言葉を引き継ぐようにして、隆治は遠くを見るようにしながら彼女の問いに答えた。

「分かりました。……橘さんの力、貸してもらいます。」

「うん、協力するよ。……あ、真子ちゃん。」

「は、はい!」

意を決した咲良の言葉に返答してから隆治が真子の名前を呼ぶと、自らに話が来ると思っていなかった為か彼女は我に返ったように返事をする。

「あの人、興里……ううん、虎徹は強い。だから、さっきみたいな無茶はあんまりしないで。」

「それは、えっと……心配してくれてます?」

諭すように告げた隆治を見ながら、真子は顔がにやけそうになるのを堪えながら彼に尋ねた。

「えっと、まぁ……そうかな。」

「ふふふ、気を付けまーす。」

隆治が困ったように返答をすると、思わずほころんだ顔を隠すためか南那を見ながら返事をする。

「ふふふ、心配されちゃった。」

「黙ってろっての。」

そのまま真子は頬を押さえながら南那に告げると、彼女は呆れたように相手を小突きながら告げた。
その直後、携帯の着信音が全員の耳に入る。

「橘です。あっ、火鍋の……」

隆治はポケットから取り出すと、通話を掛けてき朱里へといつも通りの声色で応答した。

「……ソルトさんが病院から居なくなった?」

彼の発した言葉によってその場に緊張が走ると、咲良達の視線が一気に隆治へと集まる。

「……みんな、取り合えず病院に行くよ。」

通話を終了した隆治からの声掛けに3人は頷くと、すぐに病院目指して駆け出した。

■筆者メッセージ

拍手、コメント下さった方ありがとうございました(礼)

ソルト、居なくなったってよ。
どこに行っちゃったんでしょ。
そして退院してからすぐに病院に戻される隆治くん。
本当に縁がありますね。
今回は怪我してませんけど。
こらるめんて ( 2016/01/04(月) 23:24 )