§第14章§
02
「橘さん……本当なんですか。」

咲良が問い掛けるが、隆治は俯いたまま答えない。
その様子を見て我慢ならなくなった真子は地面を蹴って手刀を放つが、虎徹は首を横に倒して頬に切り傷が出来るのを避けた。

「そんな……」

「お嬢ちゃん、軌道が真っ直ぐなものほど避けやすいものは無いんだぜ。」

真子は相手の行動に信じられないといった様子で声をもらすが、虎徹は面倒そうに答えてから欠伸をする。

「それで、良いのかよ。お嬢ちゃんの憎む奴の息子が隣に居るんだぜ?」

「……そうだよ、宮脇さん。」

咲良を視野に捉えながら虎徹が尋ねると、それに続くようによくやく口を開いた隆治が重々しく告げた。

「隠してるつもりも無かった。黙ってるつもりも無かった。知らなかったからね。けど……」

「何も言わないで下さい。」

申し訳無さそうに隆治が口を開くが、咲良はその全てを聞き終える前に言葉を遮る。

「橘先輩は、関係無い。……私が憎いのはお前だ。」

隆治に向けていた視線を虎徹に戻すと、彼女は再び睨み付けるようにしながら言い放った。

「お前は私が……」

「駄目だよ、宮脇さん。」

咲良が再び構えを取って告げようとするが、隆治が彼女に声を掛けながら前へと歩み出る。

「僕にもやらせてくれなきゃ。」

隆治が静かに告げると、虎徹は小さく笑ってからゆっくり目を閉じた。

「おいおい……お前達何言ってっか分かってんのかよ……」

「当たり前だ。……私の我慢も限界だ。」

呆れたように告げる虎徹の言葉を聞き、咲良は今にも飛び掛かりそうな雰囲気を放ちながらも答える。

「舐めるな、クソガキ共が。」

目を開き静かに告げた虎徹の言葉に思わず3人の身体は強ばるが、隆治だけが動じる事なく相手を睨み付けていた。

「マジで記憶戻ってんのかよ。しょーなねぇなぁ……場所変えるぞ。」

隆治の姿を見て虎徹は小さく笑って告げた後、踵を返して足を進めて いく。
隆治と咲良が無言のままその後ろを着いていくと、真子と南那もその後を追った。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

人気の無い空き地に到着すると、隆治と咲良の2人は虎徹と対峙をする形で向かい合う。
その雰囲気に、後方から様子を見ている真子と南那も息を飲んだ。

「何分遊んでやれば良いんだ?」

「その口が利けなくなるまでだ!」

真剣な咲良達とは対照的に虎徹が軽口を叩くと、咲良は声を上げてから駆け寄ると旋風脚を放つ。
しかしながらそれを読んでいた虎徹は、掌で咲良の蹴りを防いだ。

「威力不足、だなぁ。」

体勢を立て直した咲良は今度は地面を踏み込み体重を乗せた蹴りを放つが、再び虎徹は掌で易々と受け止める。
咲良は悔しげに歯噛みすると、距離を取ってから相手を睨み付けた。

「来いよ、隆治。少しはマシになったんだろうなぁ?」

名指しを受けた隆治はゆっくりと息を吐いてから、徐々に加速して相手に向かっていく。
その勢いが乗った掌底突きを放つが、虎徹は一歩足を引くだけでそれをかわした。

「おいおい、あんな事言ったんだからがっかりさせんなよー。」

呆れたように笑いながら告げる相手へと隆治は何度も突きを放つが、虎徹はそれらをすべて後方へといなす。
突きの1つが後方に流され距離が縮まった瞬間に隆治は相手の腹部に近い手へと力を込め寸勁を放とうとするが、虎徹は彼の手首を掴んだ。

「ハズレの中に1つ本命を交えましたってか?相変わらず大技に頼る……」

「そうかな。」

腕を受け止められながらも、隆治は相手に対して脚払いをかける。
それを察知した虎徹は寸前の所で隆治の手を離し、回避すべく後方へと下がった。

「どこでそんなの覚えた?なかなか面白い事するじゃねぇか。」

「僕とやり合った経験から油断がある……今度こそ本当に足をすくわれるよ。」

虎徹が舌打ちをしてから尋ねると、隆治は得意気な笑みを見せるようにしながら相手へと告げる。

「……分かった。お前がそこまで言うなら潰してやる。てめぇになら遠慮はいらねえだろ。……だから……」

溜め息を吐いてから虎徹は首を鳴らすようにしてから告げると、咲良に目を向けた。

「ちょっと、お嬢ちゃんは休んでな。」

「っ……!」

「咲良さん!」

一気に咲良の元へと虎徹が距離を詰めると、構えていながらも対処が遅れた彼女は声を詰まらせる。
それを見ていた真子と南那が声を上げた瞬間、隆治が咲良と虎徹の間に入った。

「馬鹿だなぁ、なんで入ってきやがった?」

「げほっげほっ……彼女は大事なてっぺん取りが控えててね……」

放たれたストレートの衝撃が腹部に伝わったためか、隆治は咳き込むがなんとか直撃を避け拳を掌で覆う形で受け止める。

「でも……捕まえたっ!」

虎徹の拳を受け止めている手に力を込め、カウンターで使用している寸勁を咄嗟に放つ。
腕に走った衝撃に虎徹は数歩後退すると、痛む手をぶらぶらとさせながらにやりと不敵な笑みを隆治と向けた。

■筆者メッセージ
りゅーくんも、お父さん大っ嫌いみたいです。
某教師と違い尊敬もしてないそうです。
こらるめんて ( 2016/01/04(月) 00:54 )