§第15章§
04
翌日、咲良は卒業式の準備が進んでいる体育館で相手を待つ。
時計がちょうど約束の時刻を示した時、遥香が後ろにラッパッパ四天王を引き連れて現れた。

「来たな……」

「ああ、いよいよだ……」

ラッパッパを率いる遥香の威圧感を感じ息を飲んでから、奈月と涼花は小声で言葉を交わす。

「この日を待っていた。……あんたまでの道のりは遠く、険しかった。」

「手が届いたつもりか?」

「掴んでみせる。」

告げられた言葉に遥香は小さく首を傾げながら問い掛けると、咲良は答えてから自らのスカーフを外した。

「……来い、咲良。」

遥香の言葉を皮切りに咲良は床を蹴り、相手へと詰め寄る。
先手を打とうと咲良は攻撃の手を休める事なく遥香目掛けて拳を放ち、蹴りを放つ。
しかしながら遥香はそれらをいとも簡単に受け止め、最小限の動きでそれをかわしていった。

「その程度か。」

様子見をしていた遥香が次第に咲良の隙を突き、カウンターを始める。
咲良が次の動作へと移る瞬間にフックを打ち込み、バランスを崩した所にもう一撃加える。
徐々に蓄積するダメージに、咲良は一度距離を置いてから悔しげに歯噛みした。

「……まだだ。」

咲良は再び遥香へと詰め寄るが、必死に1撃を与えようとするが故に1つ1つの攻撃が大振りになる。
遥香は容易にそれを避けていたが、やがて相手の振りかぶった拳を正面から腕で防ぐとその直後に肘打ちによって咲良の腹部を狙う。
確実に捉えた動きであったものの、遥香は当てる事なく彼女の腹部で寸止めをした。

「くっ……」

寸止めをされた事が屈辱的だったのか咲良は声を漏らすが、放った拳を払われると今度は拳が顔に当たる寸前で止まる。

「それで精一杯か。」

その後も幾度と無く寸止めを繰り返していたが、繰り出された拳を弾かれた事によりノーガードになった咲良目掛けて遥香は頭突きを行った。

「私を止めてみろ。」

頭突きの直撃により床に膝を着いている咲良を見ながら、遥香は勝負が始まる前となんら変わりの無い様子で挑発をする。
咲良は肩で息をしながら立ち上がると、再び床を蹴った。
速度と体重を乗せた咲良の拳が、遥香のガードを崩す。

「……止めてやる。」

その1撃により勢いに乗った咲良は相手に向かって告げると、初めの頃の勢いを取り戻したように素早い1撃を休む事無く放った。
避けられていた拳は的確に相手を捉え始め、遥香はやむなくその1撃1撃を受け止める。
その中でも遥香は隙を見つけてカウンターを放つが、当初とは異なり咲良もその1撃1撃を防いだ。

「あっ……」

「ふふふ、始まっちゃってるみたいだね。」

体育館の外から様子を伺う隆治が声をもらすと、光も楽しげに咲良と遥香の攻防に目を向ける。
やがて遥香が放った拳を見切った咲良はそれを払うと、相手の脇腹目掛けて蹴りを放つ。
正確に脇腹を捉えたその1撃により遥香は後方によろめくと、その部位を押さえながら口角を上げた。

「咲良ちゃん、粘るなぁ。」

「今まで四天王を倒してきたんだから。」

攻撃の手数を増やした遥香の攻撃を対処している咲良を見て、光と隆治は感心したように告げる。

「だけど……ガス欠かな。」

「えっ?」

光の言葉に隆治は思わず尋ね返すが再び体育館内に目を向けると、咲良の腹部の正面を遥香の拳が捉えている様子を目にする。
スタミナ切れにより追い付けなくなった彼女へと遥香の連撃が立て続けに入ると、咲良は体育館の床へと倒れこんだ。
なんとか立ち上がり遥香へと向かうが、相手の容赦無い1撃に再び床に横たわらされる。

「さくらさん……」

「もうボロボロじゃねぇか……」

相手にふらふらと向かうことがやっとの咲良を見て真子と朱里は心配そうに呟いた。
立ち上がっては倒されるだけの行為が数回にわたり続いていたが、幾度と無く立ち上がっていた咲良は倒れこんだまま動けなくなる。
横たわる咲良の元に近付いた遥香は拳を振り下ろすが、その拳は咲良の頬のすぐ横を捉えていた。

「お前も……私を……倒してはくれないのか……」

寂しげな表情を浮かべて告げた遥香の右頬に涙が伝うと、彼女は立ち上がって咲良へと背中を向ける。

「それでは何も得ることが出来ない……てっぺんも、仇を打つことも。」

倒れている咲良に声を掛けてから、遥香はラッパッパの四天王が待つ場所へと足を進めていった。

「ソルトぉ!」

「……咲良……」

背後から上がった叫び声に振り返った遥香の目には、歯を食い縛り大きく肩で息をしている咲良が映る。

「道を……あけろよぉぉぉ!」

「……あけてみろ。」

最後の力を振り絞り向かってくる咲良に、遥香は嬉しそうな笑みを見せる。
彼女がその勢いで放った拳は、遥香の顔寸前で止まる。
先に腹部への1撃を受けた咲良は、やがて後方にゆっくりと倒れた。

「……咲良。」

天井を眺めていた咲良の視界に遥香が入ってくると、自らに向かって手を差し出す。
咲良はその手を掴み何とか上体を起こした。

「てっぺんまでは……まだまだ遠い。……自分の弱さを知れ……そして、もっと強くなれ。」

咲良にそれだけを告げると、遥香はラッパッパの四天王と共に体育館を後にする。
その直後に火鍋のメンバーと真子、南那は彼女に駆け寄った。

「咲良!」

「咲良さん!」

彼女たちの呼び掛けに答えず、咲良はラッパッパが出ていった体育館の出口をぼんやりと眺める。

「おもしろいじゃないか。簡単に手が届くものなんか欲しくない……絶対超えて
みせる。……道は自分であけてやる。」

咲良はそう呟くと、見つめる先に向かって握った拳を突きだした。

■筆者メッセージ
コメント下さった方ありがとうございました(礼)

さて、さくっとソルト戦を済ませました。
ここでの結果を変える訳にはいきませんし……
問題は次からです。
マジすか4と5の間を何とか書いていく訳ですが。
多少強引なのはご了承下さい(礼)
こらるめんて ( 2016/01/16(土) 23:57 )