§第15章§
02
「……見つけた。」

激尾古高校との件から数日が経過したある日。
とある人物を探して街中を歩いていた遥香であったが、目的の人物を見つけるとその背中へと声を掛ける。

「あ?誰だお嬢ちゃん。……いや、待てよ。どっかで見たなぁ……」

その声を受けた彼は振り返ると面倒そうに返事をするが、遥香の姿に心当たりがあった為かまじまじと彼女を眺めた。

「ああ、思い出した。あんた、ソルトだろ?馬路須加学園の。」

遥香は問われた質問に対して答える事なく、ただ真っ直ぐに相手に向けて視線を送る。

「へぇ。実物はずっと良い女じゃねぇか……白い肌が良い。可愛がって欲しいのかぁ?」

「そんなもの、必要ない。私はお前を探していた……橘興里。」

彼から告げられる軽口を表情を変えずに聞き流しながら、遥香は相手の名前を口にした。

「へぇ……馬路須加学園のてっぺんってのは喧嘩しかできねぇ脳筋って訳じゃねぇんだなぁ。」

名前を呼ばれた興里は、ニヤリと口角を上げるようにしながら未だ目を反らそうとしない彼女に答える。

「うちの校長は何処へ行った。」

「さあな、俺は知らねぇなぁ。」

彼女から抑揚なく問いを投げ掛けられると、興里もまた声のトーンを変えることなく返事をした。

「仲間のヤー公が手を下したって訳か。」

「おいおい、どいつもこいつも……あんな奴らと一緒にしないで貰いたいもんだねぇ……」

遥香の告げた言葉に興里は溜め息を吐くようにしてから、小さく横に首を振り呆れたように述べる。

「逆に感謝して貰いてぇくらいなんだぜ?」

「感謝?」

「ま、詳しくは知らなくても良いけどよぉ。」

問い返されるが、これ以上話した所で意味がないと悟った興里は踵を返してその場から立ち去ろうとした。

「何故馬路須加学園を狙う。お前の息子の記憶の事か。」

足を進めていた興里であったが、遥香の言葉を耳にして足を止めると再度深く溜め息を吐く。

「ったくよ……面倒事は嫌いだってのによ……」

「同感だ。退屈しのぎにもならない面倒事は私も嫌いだ。」

振り返った興里は一気に彼女へと近付き相手を拳で撃ち抜こうとすると、遥香も向かってくる彼を標的として拳を振り上げた。
お互いがほぼ同時に放った拳は、お互いが顔寸前のところで空いている手によって受け止められる。

「どうした、本気を出さないのか。」

「遠慮すんな、大人に遠慮するガキがどこにいんだよ。」

遥香が涼しげな表情で口角を上げると、興里も楽しそうにニヤリと笑みを浮かべた。

「お前の退屈、よーく分かるぜ。よーく、なぁ……」

「お前ならば私の退屈……紛らわせてくれそうだ。」

お互いに止められていた拳を下ろし距離を空けると、2人は先程の表情を崩さないまま言葉を交わす。

「それは宣戦布告か?ははっ!おもしれぇ……」

「お前の狙いは知らない、興味もない。どうでも良い。……私を楽しませてくれ。」

声をあげて笑った興里が言葉を続けるが、遥香はそれに対して小さく笑いながらも興味無さげな様子で返事をした。

「しかし、おかしいんだよなぁ。協力して貰うはずの場所から拒否が出たみたいでなぁ……」

「それがどうした。」

「お嬢ちゃん、先に手を回しやがったな?」

「知らないな。」

目の前の相手に手を打たれた事が確実に分かっているために興里は意地悪な笑みを浮かべながら尋ねると、遥香は簡単に否定をしてから背中を向けて歩き始める。

「まぁ良い。で、お嬢ちゃんは早く学校に帰った方が良いぜ。」

「何?」

「ひょっとしたら、馬路須加学校にどっかから宣戦布告が来てたりしてなぁ?」

忠告を受けて遥香が僅かに歩く速度を早めると、興里はその背中を見て再度ニヤリと笑みを見せた。

「どこまで遊ばせてくれるか楽しみにしてるぜ、ソルトさんよぉ。」

■筆者メッセージ
感謝してほしい。
虎徹もとい、興里のこの言葉の真意にソルトは気づくことは無いんでしょうね。
こらるめんて ( 2016/01/12(火) 23:21 )