§第15章§
01
遥香が病院を抜け出すという騒動があった数日後、彼女はとある倉庫へと足を運んでいた。

「……待たせたな。」

「いいや、ウチらも今来たとこや。」

遥香が声を掛けると先に到着していた彩が言葉を返し、同席していた美優紀と菜々も姿を現した彼女に目を向ける。

「すまんな、ソルト。コイツらも来るって言って聞かへんかったんや。」

「別に構わない。」

背後に居る2人へとちらりと目を向けてから彩が謝罪をするが、遥香はいつもの様子で簡単に返答した。

「ソルト、あの時は……」

「こびー。着いてくるんは構わへん、けど口挟むな言うたはずやで。」

遥香が現れてから申し訳無さそうな表情を浮かべていた美優紀が口を開くが、それを制した彩は床に膝を着く。

「これはきっちり言わなあかん。……ほんまに、すまんかった。」

「別に……私は謝罪が欲しい訳じゃない。」

両手を着き土下座の姿勢のまま彩が再度謝罪の言葉を述べるが、遥香はそれを見てからも声色を変えることなく淡々と告げた。

「アンタ!彩がここまでしてんのに……!」

「……こびー。」

その遥香の態度が気に入らなかったのか菜々が口を挟もうとするが、彩から指示を出された美優紀が彼女の臀部に蹴りを入れる。

「痛っ!何すんねん!」

「下の名前で呼ぶなって何回も言ってるやろ、アントニオや。分かったな、オバタン。」

「はぁ!?オバハン!?」

声を上げた相手に美優紀は冷静に説明をしていくが、呼び方が癪に障った菜々は更に声を荒らげた。

「こびー、ちょっとそいつ黙らしといてや。」

「……分かった。」

後ろの様子を見ないまま彩が再び指示を出すと、美優紀は返事をしてから菜々の口元を手のひらで覆う。

「すまんな、教育のなってないもん連れてきて。……それで、何がお望みなんや。」

遥香が先程口にした言葉を聞いた為か、彩は立ち上がると相手に向かって問い掛けた。

「アンタの怒りが収まらんのやったら……ウチが受けたる。」

「そんな理由で拳を交える気は無い……そんな下らない理由で。」

真っ直ぐに視線を向けながら告げる彩へと、遥香は否定しながら言葉を続けていく。

「今回は馬路須加学園のてっぺんとしてあんたに交渉に来た。」

「交渉?」

予想をしていなかった回答が返ってきた為か、彩は相手の言葉を反芻して尋ね返した。

「うちの学園と遊んで欲しい連中が居るみたいでな。私を狙うなら好きにしろ。だが……学園には手を出すな。」

今度は遥香が彩を視野の真ん中に捉えるようにしながら、その問いへと答える。

「アンタから学園を守るような発言があるなんて驚きやわ。」

「こっちも色々あってな。」

彼女の話に彩は小さく笑いながら告げると、遥香の方もつられたように小さく笑みを浮かべた。

「納得いかないなら……来い。無理矢理にでものんで貰うぞ。」

「いや……その必要はあらへん。身体張ってアンタはウチのもんを助けたんや。頭上がるわけ無いやろ。」

遥香は強気に相手へと判断を委ねるが、彩は小さく横に首を振りながら拳を交えることを断る。

「こびーの事を完全に許せとは言わへん。せやけど……」

「許しを請う理由が私には分からない。恩義を感じるのも、負い目を感じるのも……お前達の勝手にしている事だ。」

「ソルト……」

仲間を庇おうとする彩の言葉を遮り遥香が何も気に留めない様子で告げると、美優紀はどこか喜びと安心が入り交じった様子で相手の名前を呼んだ。

「おおきに、ソルト。……帰るで、こびー、オバタン。」

「だからオバタンって何やねん!ウチは納得……だから痛いって!蹴らんといてや!」

2人に声を掛けながら、彩は倉庫を後にする。
未だ納得していない菜々は不満を口にするが、黙って彩に着いていく美優紀から再度蹴られると渋々とその後に続いた。

■筆者メッセージ
拍手、コメント下さった方ありがとうございました(礼)

ソルトさんはこんな所に行っていました。
それにしても、菜々たんが馴染んでるようで何より。
こらるめんて ( 2016/01/11(月) 10:07 )