§第13章§
04
「ここの校長室も災難だなぁ。部屋に防音設備なんて付けなかったら誰か気付いてくれたのによぉ。」

先程離れた校長室からの銃声の小ささと学園に未だ騒ぎが無い事から、男は校舎に軽く目を向けてから呟く。
その後出口である校門に足を進めていると、1人の少女が仲間らしき人物に支えながら校内に入ってくるの様子が目に入った。

「良いじゃねぇの、ヤンキーってのも。」

呟きながら校舎を目指している一同の横を通りすぎると、その一同の中の身体を支えられていた少女が男の顔を見てピタリと足を止める。

「咲良さん?」

「大丈夫か?もうすぐ教室に……」

足を止める咲良を気遣うように真子と朱里が歩み寄るが、彼女はその2人を押し退けて通りすぎた男の方を見た。

「虎徹っ!」

今までに上げた事が無い程の声を上げた咲良は、力を振り絞り地面を蹴って飛び掛かる。
しかしながら体力の限界が近い咲良の拳を、その男は簡単に受け止めた。

「あ?……ああ!誰かと思ったらあのお嬢ちゃんか。」

「私はっ……お前をっ……!」

咲良が必死に食らいつこうとするが虎徹と呼ばれた男が振り払われ、後ろに押し戻された彼女の身体を玲奈と奈月がなんとか受け止める。

「随分と大人っぽくなったじゃねぇの。髪も短くなって、出るとこも出て。まぁ、この間のお嬢ちゃんよりはボリューム不足が……」

「何なんだ!お前は!」

咲良を庇うように声を上げた南那と真子は、支えられている彼女と虎徹の間に割って入った。

「ったくよー、でかい声出すんじゃねぇよ……乳臭ぇガキには興味ねぇっての。」

「なっ、ちちくさ……!お前、ふざけんなよ!」

「謝んなら今のうちだぜ。」

虎徹は面倒そうに告げると下がるようジェスチャーで2人に告げるが、その言葉を受けて真子と南那は戦う姿勢を見せる。

「どけ……お前達の敵う相手じゃない……」

咲良はなんとか自分の足で立ち上がると、真子と南那の間を割って虎徹の前に立った。

「私は……私は2回虎徹を倒した……お前に乗せられてっ!」

咲良が叫びながら放った拳を、虎徹は再び受け止める。

「乗せられて?おいおい、人聞きの悪い事言うなよー。お嬢ちゃんが勝手に間違えたんだろ?それに昔からこんな言葉があんだよ。」

左右に小さく首を振り咲良を真子と南那の元へと押し返すようにしてから、虎徹は言葉を続ける。

「虎徹を見たら偽物と思え、ってな。」

「だけど……今度は本物を見つけた……逃しはしない。」

真子と南那に支えられながら、咲良は虎徹の事を睨み付けるようにして再び立ち上がろうとした。

「俺も偽物かもしんねぇぜ?だけど気を付けろよー……」

再度立とうとする相手に溜め息を吐いてから、虎徹は静かに口を開く。

「本物の虎徹はそんじょそこらのなまくらとは切れ味が違う。」

声のトーンが低くなりやや真剣な様子で告げられた虎徹の言葉を受け、そこに居た全員が身体を硬直させた。

「まぁ、そういう訳だ。お嬢ちゃんも大人の遊びに付き合ってもらうんなら充分なんだけどよ……」

「あんた、ウチの学校で何やってるん。」

真剣な雰囲気が無くなった虎徹がからかうように告げていると、彼の背後から声が上がる。

「まさかとは思うんやけど……大の大人が学生苛めなんてしてへんよな?」

「当たり前だろ?弱い奴をいびるなんて俺の1番嫌いな事だからよぉ。」

学校に到着したラッパッパ四天王は彼に声を掛ける由依を先頭にして咲良達の元に駆け寄ると、虎徹は彼女に答えてから校門へと向かっていく。

「待て……」

「咲良、落ち着き。……あんた、何しに来たんや。」

呼び止めようとする咲良にそっと声を掛けてから、背中を向けている虎徹に問いを投げ掛けた。

「お嬢ちゃん達の校長先生とちょっと話をしてただけだ。」

背中を向けたまま由依に話をしていたが、その時黒いスーツを着た2人組が虎徹の元へと帰ってくる。

「生憎、ウチの学校はヤクザお断りや。」

「おい、ガキ。もういっぺん……」

由依の言葉にスーツの男が何かを言おうとするが、虎徹に目を向けられると口を閉ざした。

「これだから気の短いヤー公は嫌いなんだ。お嬢ちゃん、俺はヤー公じゃねぇ。一緒にしないで貰いたいもんだなぁ。」

目で指示を受けたスーツの2人は先に校外へと出ていくが、虎徹は伸びをしながら鋭い視線を送っている由依に説明をする。

「今回来たのだってあんたらお嬢ちゃん達の為なんだぜ?俺だって暇じゃ無いもんでなぁ。」

虎徹は言葉を続けながら再び足を進め始めると、視線を送っている相手らにひらひらと手を振った。

■筆者メッセージ
明けましておめでとうございます!
今年も作品を宜しくお願い致します。
と、いうことで。
最初は咲良ちゃんに怒って頂きました。
こらるめんて ( 2016/01/01(金) 21:01 )