§第12章§
05
「ここは、タイマンで決着つけようや。……誰がウチとやるん。」

「……私だ。」

激尾古のてっぺんである彩がラッパッパに尋ねた瞬間、ちょうどその場にたどり着いた咲良が声を上げる。

「アンタが、咲良やな。……手加減せぇへんで。」

「ソルトの決着、私がつける。」

彩がスカートの裾を破り笑みを浮かべて告げると、咲良もスカーフを投げ真っ直ぐに相手を見ながら答えた。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

「なんやねん、ソルトとかアントニオとか……こんなおかしなったのは全部アイツのせいや!」

咲良と彩の直接対決が始まる裏側で、横たわる生徒を避けながら菜々は校舎内を進んでいく。

「アイツって、僕?」

「そうや、アンタが……って、何でおんねん!」

自らが独り言として話していたにも関わらず、その対象の人物が現れると菜々は悲鳴にも似た声を上げた。

「ねぇ。彩ちゃんとさっきの宮脇咲良ちゃんって子、どっちが勝つと思う?」

「そんなん知るわけないやろ!」

相変わらずの調子で光は菜々へと問い掛けるが、警戒をしている彼女は相手からの質問へ回答するのを拒否する。

「その宮脇咲良ちゃん、彩ちゃんと同等のレベルになってるりゅーくんを強いって推してるんだよ。」

「橘と同等なんてそんな……ああっ!」

光が続けた言葉を否定しようとした菜々であったが、その際に何かを思い出したように声を上げた。

「アンタ、橘の記憶戻したやろ!」

「えっ?……どうしてそう思うのさ。」

彼女が切り出した話題に光は少し驚いた表情を見せるが、やがて相手ににこりと笑いかけながら尋ね返す。

「橘の能力って奴にかかった奴がいるからや!」

「へぇ……そこまで知っちゃって、ペラペラ話されたら困るかな。」

菜々が握り拳を作ってから光に向けて言うと、彼は先程よりも言葉に真剣みを持たせながら答えた。

「全部、話して貰うでっ!」

「おっと。」

声を上げながら菜々は彼に向かってストレートを打つが、光は余裕を見せながらそれをひらりとかわす。

「ちょこまか動くなや!」

「……このお喋りを、野放しにしとくのは危険かなぁ……」

一心不乱に光を捉えようと攻撃を続ける菜々を見て、光はそれを避けながらも小さな声で呟いた。

「何ごちゃごちゃ……」

「はい、ストップ。そんなに知りたいならさ、うちに来なよ。」

「は?」

再び放たれたストレートを両手受け止めてかは光が相手に提案をすると、菜々は訳が分からないといった様子で首を傾げる。

「この高校も沈みかけた船だよ。ほら、ね?」

「彩……!」

話を続けながら光がとある場所を指差すとちょうど咲良が彩へと最後の一撃を撃ち抜いた様子が伺え、菜々は思わず彩の名前を呼びながら1歩前に出た。

「あれは菜々ちゃんの知る彩ちゃんじゃないのにさぁ。沈みかける船に乗ってる理由が……」

「決めた。」

説得をしようとする光の言葉を遮るように、菜々は決断した旨を伝えながら相手へと身体を向ける。

「今からが、きっとさや姉には大変になる。今のさや姉が誰でも構わへん。さや姉はさや姉や。……能力について聞くんは後や、今はさや姉を支えたい。」

「ま、そうなら構わないけどさ。」

真剣な様子で告げる菜々を見て光は苦笑いをすると、ひらひらと手を振りながら彼女の前から立ち去った。

「これで菜々ちゃんは大人しくなったからいっか。ゲキカラちゃんとネズミちゃんにも釘を刺してる。」

菜々の居た場所から歩き進め階段を上がりながら、光は指を折り確認をするように告げていく。

「あの子達、どこまで乗ってくれるかな。」

彼は屋上に上がると、激尾古高校から出ていく咲良達を眺めながらぽつりと呟いた。

■筆者メッセージ
ようやく菜々ちゃんがアントニオ、もといさや姉に協力するようになりました。
いやー、長かった。
こらるめんて ( 2015/12/25(金) 00:06 )