§第12章§
01
数日後。
咲良との対戦を控えている遥香が学校へ向かおうとした道中、現れた人物に道を遮られる。

「アンタが、ソルトやな。」

「だとしたら……何だ。」

声を掛けてきた相手へと遥香は短く答えるが、美優紀はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

「私には用事がある……邪魔をするな。」

「ウチらやってアンタに用事があんねん。……まさかマジスカのてっぺんが逃げへんよな、ソルト?」

遥香は無視をして先へと進もうとするが、美優紀の1言を受けてから面倒そうに振り返る。

「それなら……準備運動を手伝って貰おうか。」

「いつまでそんな口が利けるやろうな?……こっちや。」

挑戦するように答えた美優紀に促され遥香が着いて行こうとした時、隆治がその場を目撃する。
何とかしようと隆治は遥香の元に駆け寄ろうとするが、気配に気付いた遥香が彼へと目を向ける。

『くるな、しんぱいするな』

口の動きで遥香は相手へと告げると、小さく笑みを見せてから倉庫へと姿を消した。
彼女の意思により足を止めさせられた隆治であったが、我に返ると先日中を見ていた窓まで近付くと中の様子を伺う。

「覚悟しいや、ソルト!」

「打ちのめしたらぁ!」

集まった連中は一気に遥香に向かって襲いかかるが、彼女はそれを1つ1ついなし、防ぎながらカウンターを打ち込んでいった。

「こんなんじゃ、準備運動にもならない……」

言葉に余裕を含ませながら遥香は告げるとまた1人、床に転がしながら美優紀へと歩み寄っていく。

「あとは……お前だけだ。」

「何でこんな……一方的に……こんなはず……」

床に倒れている自らが集めた集団を見ながら美優紀は呟くが、1歩1歩遥香は相手へと前へ進んだ。

「ウチがやらなあかん……分かってたことやんか……ソルト!観念しーや!」

呟きながら握り拳を作ると、美優紀は声を上げながら遥香へと向かっていく。
しかしながら勝ちを急ぎ大振りになる美優紀の攻撃を、遥香は簡単に避けていった。

「もう……2番では……いられへんのや!」

振り下ろされた拳を避けてから勢いが消えていない相手に遥香が脚払いを掛けると、美優紀は転倒して床へと手をつく。

「くそ……舐めやがって……何で……何でウチには届かへんのや!」

再び立ち上がった美優紀は、再び遥香へ殴り掛かろうとした。
しかしながら今度は美優紀の拳が振り下ろさせるより先に遥香の蹴りが相手を捉えると、美優紀はその勢いのまま倉庫内の棚に背中をぶつける。

「まだや……まだ……まだ終われへん!」

何とか立ち上がった美優紀は力無く遥香に向かおうとするが、遥香は全力で蹴りつけて再び美優紀の背中をぶつけさせる。

「くそ……お前を倒すまで……」

体力の限界が近付き、美優紀が譫言のように告げながら立ち上がろうとした時だった。
衝撃を受けた棚から鉄パイプが美優紀の元に落下しそうになる。

「あ……」

「これはいけない……!」

動けなくなっている美優紀を見て、隆治は覗いていた窓から倉庫内へと飛び込んだ。

「ソルトさん、危ない!」

「来るな! 」

危険な場所に居る遥香に隆治は忠告しようとするが、普段は寡黙である彼女が吠えた事により威圧されて硬直する。
隆治の元へと美優紀を突き飛ばした直後に棚上から落下した鉄パイプが落下し、美優紀を庇った遥香はその下敷きとなった。

「何だよ……これ……」

「おいマジかよ……知らねぇぞ!」

「こっちは乗っただけだからな!」

美優紀が集めた集団は体力が回復し何とか立ち上がっていたが、惨状を目の当たりにして口々に告げながら倉庫を逃げるように立ち去る。

「ウソや……なんでこんな……ウチなんかを……」

「……はい……!急いで下さい……!」

放心状態になり鉄パイプの山にぼんやりと目を向けながら美優紀は呟いていたが、その傍らで隆治は緊急通報を済ませると遥香がいる場所に駆け寄った。

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〜馬路須加学園体育館〜

「……ソルト、遅くねぇか?」

「まさか、逃げ出したとか?」

指定されていた場所で咲良は遥香の到着を待っていたが、予定していた時刻を大幅に過ぎている為に時間を気にしているのか再び時計に目を向ける。
冗談めかして真子と南那は告げていたが、ラッパッパサイドから睨まれると口を閉ざした。

「咲良!?」

「何か……嫌な予感がする。」

静まり返る中で学園の近くを救急車が通ると、咲良ははっとしたように駆け出す。
尋ねる朱里に咲良は答えてから体育館を後にすると、その場に居た全員が咲良の後を追いかけた。

■筆者メッセージ
先日お伝えしたお休みの前に、多数ご希望がありました隆治くん×ソルトのイベントでした。
こらるめんて ( 2015/12/15(火) 11:47 )