§第11章§
04
「光には本当に困ったなぁ……」

突然引き返した相手に呆れたように呟いていたが、数人が騒ぎ立てているような声を耳にした隆治は辺りを見渡す。

「あの倉庫……?」

音を便りに倉庫の窓の側まで駆け寄ると恐る恐る中を覗いた。

「おい、まだかよ!」

「集まってるんだから早くしろよ!」

多くの罵声が上がる中でその集団の前方に隆治の見覚えがある人物が姿を現すと、一気にその場が静かになる。

「皆さん、よく集まってくれましたー。こんだけ居れば充分やな。」

先頭に立つ人物は、集まったメンバーを見渡すようにしてから満足そうに声を掛けた。

「こびー、集めた理由教えろよ。」

集団の中の1人が先頭に立っている彼女の愛称を呼ぶと、美優紀はその人物に対して笑い掛ける。

「最近、マジ女が荒れてるんはしってるやんな?」

「あの噂の転校生か……」

「今どうなってんだよ、校内事情は……」

得意気に笑う美優紀から咲良の話が出ると、その集団はやがてざわざわと騒ぎ始めた。

「けど、最近そのラッパッパの四天王が咲良って奴に負けたみたいやね。その咲良も、今は弱ってる。」

「咲良って奴そんなにつよいのかよ!」

「つー事は、今マジスカってボロボロなんじゃねぇか?」

現状を知った連中が興奮したような声が上がると、美優紀もどこか嬉しそうな様子で口角を上げる。

「その通りや。誰もソルトを守れる奴がおらへん。アントニオはこの時を待ってたみたいやけど……」

美優紀が手を打ち鳴らして全員に合図を送ると、彼女の話を耳にするべく全員が口を閉ざし静まり返った。

「今がチャンスや。アントニオより先にソルトの首、取ったんで。」

言い切った美優紀の言葉を受けて集まった全員が再び興奮したように騒ぎ立てると、隆治はようやく覗いていた窓から顔を離す。

「これはいけない……早く知らせなきゃ。」

自らを落ち着けるように深呼吸してから立ち上がると、隆治は学園に向けて駆け出した。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

学園に到着した隆治は無我夢中で走り続けると、吹奏楽部の部室への階段を駆け上がってそのドアを開いた。

「ソルト、ソルトは居る!?」

「あれ?橘くん?」

「てめぇ!ここに入るってのはどんな意味か分かってんだろうなぁ!」

突然現れた隆治にゆりあはきょとんとするが、李奈は彼を睨み付けるようにしながら指を鳴らす。

「待て。」

しかしながらその直後に隣の部屋から遥香が現れて告げると、李奈はどこか不満そうに溜め息を吐きながら後ろに下がった。

「咲良についてだろう。……屋上に来い。」

自らに着いてくるように促した遥香に頷くと、隆治は相手の背中の後を歩いて追う。
疑問を持ったゆりあは首を傾げたが、不満が溜まった李奈は八つ当たりするかのようにサンドバッグを思いきり殴り付けた。

「……何があった。」

「激尾古のこびーって奴が、ソルトの首取りって名目でヤンキー集めてたんだ!」

屋上に到着してから遥香が振り返り尋ねると、隆治は見た光景について必死に伝える。

「……それだけか?」

「えっ……?」

しかしながら遥香が全く気にする事のない様子で返事をすると、彼は唖然としながら言葉をもらした。

「そんな奴ら相手に不安になられるとは……」

突然彼女から放たれた回し蹴りを、後方に飛び退き隆治はかわす。
その後ほとんど時間を空けずに距離を詰めると、遥香が放った掌底が彼の腹部を捉えた。

「私も舐められたものだな。」

「くっ……」

休む事無く続く攻めを隆治は大方防いでいたが、防御の間に合わないうちに放たれる彼女の速く、鋭い攻撃によって隆治は徐々に後退を強いられる。
隙を突いた彼女の一撃が再び腹部を捉えると、隆治は痛む腹部を押さえるようにしながら距離を取るべく大きく後ろに下がった。

「……まだ、不安か?」

「ソルトさん!」

「アカンで……ソルト。」

ニヤリと笑ってから遥香はまた隆治へと踏み込もうとするが、手当てしていた杏奈とそれを受けていた由依が屋上に現れると声を上げて彼女を止める。

「橘隆治。あなたが気にする事は無い。……それもただの退屈しのぎだ。」

現れた2人に目を向けてから去り際に隆治へと静かに言葉を残すと、遥香は由依と杏奈を引き連れて室内へと姿を消した。

■筆者メッセージ
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こらるめんて ( 2015/12/13(日) 13:29 )