§第11章§
03
「宮脇さん、いよいよてっぺんとかぁ。」

「どうなるんだろうね、ふふふ。」

咲良と由依の対決が終わってから、隆治と光は帰路につきながら言葉を交わしていた。

「あっ……そうだ。光。」

「んー?どうしたの?」

「真剣な話、なんだけどさ。」

いつも通り気の抜けた返事をする光に対して深刻な様子で口を開くと、光も目線だけを相手に向ける。

「玲奈なんだけど……」

「また玲奈ちゃんの話かぁ。今度はなに?」

「記憶、戻ってないよね?」

相手から最愛の人物の名前が口にされると呆れたように返事をするが、続いた言葉に驚いた光は視線を隆治へと戻した。

「えっ、どういう事?」

「玲奈が、前に僕の名前を呼んだんだよ……」

詳しく話すように促されると、隆治は以前の事を思い出してか俯くようにしながらも問いに答える。

「あははっ、聞き間違えじゃない?りゅーくんが玲奈ちゃんの事好きすぎるからさ。」

「そんな、確かに僕は……」

「りゅーくん。記憶を戻せるのはあいつらか、僕だけなんだよ?今玲奈ちゃんの記憶を戻してメリットがあると思う?」

間を空けてから笑い声を上げる相手に隆治は真剣な表情で訴えようとするが、表情から笑みが消えた彼から問われると言葉を失った。

「……そうだよね。」

「そうそう。気にしすぎなんだってば。」

「……本当に聞き間違いだったのかな……」

筋が通っている相手の話に1度は納得したように同意するが、その際に耳にした最愛の人物の声が忘れられずぽつりと呟く。

「玲奈ちゃんの事は今は忘れる!仮に記憶が戻ってても、知らないふりをする!」

「それは……」

「何度も言ってるでしょ?こうやって研究所の連中に気付かれないように動いてるのは運が良かったからだよ。」

周りに敵対している人物が居ないかを確認してから光が隆治の横槍を受け入れずに話を始めると、隆治も相槌をうちながら黙って耳を傾けた。

「仮にもう1回記憶操作されたら……」

「分かった、分かったよ。……もう言わないで良いよ……」

まだ話が続くと思ったのか、隆治はうんざりとしたように話を遮ってから小さく息を吐く。

「今は隙を伺う、良いね。」

念を押すように光が告げた言葉に隆治が頷いて意思表示をすると、暫く無言の時間が流れていった。

「……あ。」

「まだ話続けるの?」

何かを思い出したように光が口を開くと、隆治は困った表情見せながら相手に問い掛ける。

「忘れ物しちゃった。りゅーくん、先に帰っててくれる?」

「なんだよそれー、真剣な話の後に……」

「あはは、ごめんごめん。」

光の言葉に隆治が安堵したように息を吐くと、彼は謝罪をしながら悪戯っぽく舌を見せる。

「……じゃあね。」

「ばいばーい。」

隆治の背中が見えなくなったのを確認してから、光はポケットから携帯電話を取り出すととある相手に通話を掛けた。

「……今日話せるかな?いつもの場所、いつもの時間で。」

■筆者メッセージ
今日はちょっと頑張りますか。
こらるめんて ( 2015/12/13(日) 13:27 )