§第11章§
01
真子と南那が2度目の救出を受けた数日後、チーム火鍋と1年ペア、隆治と光はしんと静まり返った教室に居た。

「……静かだな。」

「……当たり前だろ、おたべ戦をひかえてんだからな。」

沈黙が気まずいのか奈月が言葉を口にするが、それに頷きながら玲奈も言葉を続けた。

「咲良さ……」

「やめとけ、お前らが今声掛けたら邪魔になる。集中してんだからよ。」

声を掛けようとする真子に朱里が口を挟んで制すると、真子は相手を睨み付けるが言い返す事が出来ない為か口を閉ざす。

「咲良さん……大丈夫ですかね……」

「1番落ち着かないのは咲良ちゃんだからね。見守っててあげようか。」

南那は光へと問い掛けるが、集中している咲良を見て彼はどこか楽しそうに答えた。
その直後、咲良が座っていた椅子から立ち上がる。

「咲良が動いた……!」

「きっとおたべの所……に……?」

美音と涼花が立ち上がった彼女を見て言葉を交わすが、その相手が向かった場所に疑問の声を上げた。
咲良は隆治の前に移動をすると、真っ直ぐに彼を見据える。

「宮脇さん、どうしたの?」

「橘さん。手合わせ、付き合って下さい。」

まじまじと見つめられた為に隆治が問い掛けると、咲良は落ち着いた声で簡潔に用件だけを述べた。

「良いよ、じゃあ広いとこに行こうか。」

「体育館裏に。」

辺りの視線を気にしてから隆治が返事をすると、簡単に場所を告げた咲良が教室を出る。
緊張が伝わった為か隆治は小さく息を吐くと、ゆっくりとその背中を追った。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

体育館の裏に移動した後、隆治は無言で攻撃を放ち続ける咲良の攻撃をいなしながら避け続けていた。

「落ち着かないの?」

「はい。こうやって無心にしていた方が、落ち着きます。」

隆治から問われると、攻撃の手を休めた咲良は小さく頷くようにしてから肯定をする。

「自分の事を知られ尽くして戦うって……どんな気持ち?」

「不安です。でも……負けるわけにはいかないのでっ!」

力強く言い終えると同時に咲良は彼の胸の辺りを目掛けて蹴りつけるが、隆治は瞬時に横に飛び退いた為にその蹴り空を突く。
その直後に隆治が足を振り上げて踵落としを放つと、紙一重で咲良は後方に下がりそれをかわす。

「あっ……大丈夫だよ、全力で当てるつもりはなかったから。」

「いえ、そうじゃないんです。」

避けた咲良がまじまじと視線を向けた為に隆治は慌てて説明をするが、彼女はすぐに否定した。

「橘さんに蹴りのイメージが無くて。」

「なるほど……でも、出来ない訳じゃないんだよ。」

真っ直ぐに見つめながら告げられた言葉に隆治は数回頷くと、咲良目掛けて蹴りを中心とした連撃を行う。
彼女は1つ1つ攻撃を防ぐようにしていたが隆治の足が上がったのを見ると構えを取り、踵落としを行ってきた足を両手で受け止めた。

「……成長力が恐いよ……」

先程行ったばかりの攻撃を既に学習した彼女を見て隆治が呟くと、咲良はどこか自信ありげに小さく笑みを浮かべる。
その後彼女は隆治の足を振り払うと連続で攻め込み追い詰めると、相手が攻撃を防いだ際に空いた鳩尾に向かって拳を放ち寸止めをした。

「……今の、やられてたね。」

「ありがとうございました。もう、迷いはありません。……全力でぶつかってきます。」

自らの胸元の直前で止まっている拳を見て、隆治は息を吐くと困ったように告げる。
咲良は彼に深々と頭を下げてから踵を返し、静かに彼の前から立ち去った。

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〜同時刻、馬路須加学園内茶道室〜

「……邪魔したか。」

「構わへんよ、別に。」

精神統一をしている由依へと遥香は気を遣うが、彼女は目を開けて首を横に振ると相手を招き入れた。

「咲良には感謝してる。学校を守るラッパッパの指名を思い出させてくれたんやから。……けどソルト、堪忍な。」

正座をしていた由依であったが、立ち上がって部屋に入ってきた遥香の方向に身体を向けると小さく笑みを浮かべる。

「咲良はソルトの所までは辿り着かせへんわ。」

「私は……何かを背負って戦っているわけじゃない。……退屈を凌げるなら何でも構わない。それが、今は咲良なだけだ。」

真っ直ぐに由依は相手を見て宣言をするが、遥香は由依から視線を外しどこか遠くを見るようにしながら答えた。

「ソルトが気にしてる男子は……」

「お前が気にしなくて良い。咲良との戦いにだけ集中してくれればな。」

由依の言葉を遮るように遥香が口を開くと、言葉を残してそのまま茶道室を後にする。

「ソルトは何か隠してる……けど、今は咲良が先や。階段……上らせへん。」

出ていく遥香を見送ってから再び正座をした由依は呟くと、大きく息を吐いてから精神統一を再開した。

■筆者メッセージ
いよいよ、おたべ編です。
4も後半ですね!
こらるめんて ( 2015/12/07(月) 15:06 )