§第10章§
04
「久々やなぁ……こうやって手合わせするんも。」

「はぁ?何言ってるん……だよっ!」

懐かしそうに語る相手に美瑠は疑問を口にしながら蹴りを放つが、菜々は腕を使ってそれを防いだ。

「後半に強い美瑠やったけど……今は怖ないわ!」

「……なんやねんこの馬鹿みたいな力。」

その後菜々が反撃の為に行った腹部目掛けての蹴りを美瑠は防ぐが、勢いを止めきれずに後ろへと後退する。

「きゃははははっ!後ろがら空きやん!」

「楓子がこんな戦い方とか、ありえへんわ。」

美瑠の方に目を向けていた相手の隙を突いて楓子が殴りかかろうとするが、菜々は呆れたように言いながら振り返った。

「そんな直接的な攻撃する楓子も全然怖ない。」

「えっ……」

放った拳が止められると、楓子は驚きのあまり言葉をもらす。

「冷静に避けられて、隙を突かれた方がよっぽど怖いわ!」

「ぐっ……ごほっ、ごほっ。」

空いた鳩尾目掛けて菜々が肘打ちを放つと、直撃した楓子は咳き込みながら床に膝をついた。

「ナデ女の時のアンタらの方がよっぽど強いわ。」

「ふざけやがって……」

不満そうに告げる菜々から距離を取る美瑠は苛立ったように言うと、スプレー缶がある方向へゆっくりと後退する。
しかしながら床に置いてあるスプレー缶に気付いた菜々がそこへ駆け寄ると、缶を遠くへと蹴り飛ばした。

「こんなんに頼ってどうすんねん!そんな戦い方する奴らとは……」

「ふふ……捕まえた……きゃは……きゃはははっ。」

美瑠を睨みながら怒鳴るように言っていた菜々であったが、背後から楓子によって突然羽交い締めを受ける。

「余計な事されると……困るんだよっ!」

羽交い締めにされて身動きが取れなくなった間違い菜々の頬を、美瑠は思いきり殴り付けた。

「やり返すタイミング……無くなるやろうがっ!」

今度は腹部に拳が命中すると、菜々は咳き込みながら腹部を押さえて前のめりになる。

「あの男の子にもお礼せなあかんのやから!きゃははははっ!」

前のめりになる相手の背中に楓子が笑いながら肘を落とすと、菜々は床へと手をついた。

「男の子……多分橘や……それで楓子がいう事を考えると……」

「何ぶつぶつ言ってんねん!」

独り言を呟いている相手を見て美瑠は彼女の顔を蹴ろうとするが、菜々はそれを腕で受け止める。

「美優紀が言ってた能力って奴なんかな……と、いう事は橘も記憶が……」

「きゃははははははっ!まだ立てるん?私もまだまだ足りな……」

ゆっくりと立ち上がりながら呟き続ける姿に今度は楓子が蹴りを放つが、菜々は簡単にいなすようにしてそれを避けた。

「今日のウチ、めっちゃ冴えてるわ。」

「訳わかんねぇ事言ってんじゃねぇよ!」

「悲鳴、さっさと上げてーや!」

「貴重な情報、ありがとうな。」

手をぱんぱんと叩くようにして告げる彼女に美瑠と楓子が声を上げて向かっていくと、菜々は礼を告げてから身構える。
その直後菜々は床を蹴って美瑠の懐に潜り込み鳩尾に一撃加えると、そのまま流れるような動きで楓子の側頭部を蹴りつけた。

「嘘や……」

「めっちゃ……強い……」

「お礼にこの事、美優紀達に報告は止めとくわ。」

強力な一撃を受けた美瑠と楓子は床に膝を着き息を乱しながら相手を睨み付けるが、菜々は余裕を持った様子で告げると倉庫を後にする。

「なんでこんな強い奴の事……今まで知らんかったんや……」

「そんなんこっちが聞きたいわ……誰やねん……あれ……」

去っていく菜々の背中を見ながら2人は言葉を交わすと、疲労困憊だった為か寝そべるように床へと横になった。

■筆者メッセージ
ななちゃん、そんな強い雰囲気無かったのにな……
こらるめんて ( 2015/12/04(金) 08:38 )