§第10章§
02
クロバラとシロギクの居る場所を目指して進んでいる菜々の目に、見覚えの無い3人組の男が映る。
不審に思った彼女は、3人の前で足を止めた。

「アンタら、誰や。この学校の奴ちゃうやろ。」

「なんだよー、お嬢ちゃん。やっと仕事が終わって帰るところなのにさぁ。」

男達の目の前に現れた菜々は睨み付けながら言うが、3人のうち真ん中に居た男は欠伸をしてから彼女に答える。

「聞いてんのはこっちや!」

「俺だってこんなとこに好きで来たんじゃねぇよ。な?分かったら退いた退いた。」

「待ちーや!まだ話の途中やろ!」

質問に対して適当に答えた後に手で退くようジェスチャーをした男は菜々の横を通りすぎようとするが、彼女は声を上げた。

「あ?まだ何かあんのかよ?んー……そうだな……」

「……な、何やねん。」

くるりと彼女の方へと向き直った男は、顎に指をやりながら菜々をまじまじと見つめる。

「ちんちくりんだけど、胸とかスタイルは悪くねーなぁ。遊んで欲しいなら、今度あそんでやるよ。今日は疲れたからまた今度なぁ。」

「……ふ、ふざけるのもいい加減にっ……!」

自らを品定めしたような発言を受けた菜々は真っ赤になるが、やがてその人物へと殴りかかろうとした。
その直後、彼女は相手の視線を受けて自らの身体が動けなくなった事に気付く。

「あーあ、またやっちゃった。怖くて身体動かねぇんだろ?気にすんな、大概がそんな反応だからよぉ。」

「こんな奴……なんかに……」

男がそう告げて背中を向けると、菜々は悔しそうに相手を睨み付けながら告げた。

「おい、クソガキが!素直に退いとけや!」

動けなくなった彼女目掛けて、男の隣にいた黒いスーツを着た人物が拳を振り上げる。
しかし次の瞬間、その人物は男に首を掴まれて壁へと押し付けられていた。

「おいおい……動けねぇお嬢ちゃんにそれはねぇだろうよ?」

「ごほっ、ごほっ……ですがテツさんに……ぐぇっ。」

「その呼び方好きじゃねぇって言ってるだろ?ったくよー。誰のせいでこんなとこまで来なきゃいけなかったと思ってんだよ。」

喉を掴まれている人物が何かを告げようとするが、名らしきものが口にされた途端男は首を掴んでいる手に力を加えながら気だるそうに告げる。

「失礼しました!こちらの力不足です、大変失礼しました!」

「……本当によぉ……勘弁してくれよ。」

「……ごほっ、ごほっ……し、失礼……失礼しました……」

もう1人の黒いスーツを着た男から謝罪をされると、ようやく喉を掴んでいた手を離した。
解放された男は咳き込むようにしながらも、すぐに謝罪の言葉を述べる。

「ほら、疲れたんだから車回してきてくれよな。」

「はい!すぐに!ほら、行くぞ!」

「……了解しました。」

テツさんと呼ばれた男が口にするや否や先に謝罪をした男は走ってその場を立ち去り、喉を掴まれていた男は菜々をにらむようにしてからその場を後にした。

「最低だよなぁ……動けない相手に強気になる奴、格下の相手にしか噛み付かない奴。」

急いで走り去っていく背中を見ながら、男はもう1度欠伸をした後に告げる。

「だからまだお嬢ちゃんは良い子だ。格上の奴に噛み付こうとしたしなぁ。」

「格上?……いつのまに下に見られてたんやろうなぁ。」

身体の自由が利くようになったのか、睨んでいる相手に向かって菜々は強気に言い放った。

「マジかよ、お嬢ちゃん。自分の力量分かってんのかぁ?」

「力量とか、そんな問題ちゃう!」

「ははっ、良いねぇそういうの。」

睨む菜々へと気だるそうに言っていたが、菜々は思い切り声を張り上げる。
それを見た男が声を出して笑ってから視線を向けられると、菜々は再び圧倒されて後方へと後退った。

「お嬢ちゃん、オトナのお遊びならいつでも付き合ってやるよ。けどなぁ……そっちのお遊びはまだまだ相手して貰うのは早ぇなぁ。」

男は踵を返してから告げると、背中を向けたまま菜々へと手を振る。
相手の姿が見えなくなると、菜々はその場にぺたりと座り込んだ。

「なんやねん……アイツ……ありえへん……」

呆然としながら菜々は呟いていたが、自らの目的を思い出すとはっとして立ち上がる。

「クロバラとシロギクや……」

気合いを入れ直すように自らの頬を両手で1度叩いてから、菜々は再び倉庫を目指した。

■筆者メッセージ
怖いお兄さんが初めて作中に出ました。
そろそろマジすか5寄りの方の雰囲気も出していかねば。
こらるめんて ( 2015/11/29(日) 11:24 )