§第9章§
05
真子と南那を救出した日の夜。
人が居ない筈の馬路須加学園の屋上に、2つの影が映る。

「遅かったな。」

「傷だらけになっちゃったから遅れちゃった。」

先に待っていた少女に対して、姿を現した光は悪びれた様子もなく笑いながら答えた。

「急にあんな無茶言いやがって、私をあてにし過ぎじゃないのか?」

「いやいや、幅広い交遊関係を持つネズミさんなら何とかなると思ったのさ。」

意地悪に告げられた無いようにも全く動じずに光は答えると、愛称を呼ばれた麻友はにやりと笑う。

「僕の方も間に合ったし、りゅーくんの方も間に合ったみたい。」

「そうか……ふふ、良かった。」

彼から結果を告げられると、それを受けた麻友の表情は自然と綻んだ。

「あ、今女の子の顔した。」

「うるさい、黙れ。……こんな暗がりで分かる訳が無い。」

それを見逃さなかった光がからかうように笑いながら口にした内容に、麻友は顔を背けながら反論をする。

「それで、良い情報をくれるんだろ?相当勿体ぶってたんだ、自信はあるんだろうな?」

「勿論だよ。それはね……りゅーくんの記憶が戻ってること。」

話題を変えるように麻友が話を切り出すと、光は自信ありげに返事をしてから簡単に相手へと答えた。

「りゅーじ君の記憶が……そっか……そうなんだ……」

「ね?良い情報でしょ?」

「べ、別に。……なんてこと無い情報だ。」

「ふふふ、喜んでくれて何よりだよ。」

嬉しそうに呟く彼女に問いかけるが、麻友は即座に否定をする。
そんな彼女を見て光はくすくすと再び笑みを浮かべた。

「で、ネズミちゃんは……余計なこと、してないよね?」

「まさか。何で私が厄介事を増やさなきゃいけないんだ?」

「ふふ、確かに。」

笑みを見せながらも光は警戒するように問い掛けると、麻友はさらりと返事をする。

「じゃあ、また何かあったら宜しくね。」

「……状況によっては協力してやる。」

光の言葉を聞いてから、麻友は踵を返して室内に戻る扉に向かった。
背中を向けながら彼女は答えると、そのままドアを開けて屋上から立ち去る。

「りゅーくんの為って事だよね、本当に素直じゃ無いなぁ。」

姿が無い麻友に言うと、光は柵に寄り掛かるようにしながらぼんやりと校庭を眺めた。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

屋上から帰った麻友は帰路についていたが、とある場所に差し掛かると足を止めた。

「上手くいったみたいっすねぇ。」

「……ああ、ムカつくけど全部お前の言う通りだ。」

影から現れた相手へと、麻友は姿を見る事無く問い掛ける。
その人物は、彼女の問いにどこか不満を抱くような形で答えた。

「我慢は出来たんすか?」

「出来る出来ないじゃない。しなきゃいけないんだろ……りゅーくんの為に。」

「上出来っす、ゲキカラさん。」

相変わらず不機嫌そうに話を進めていく松井玲奈に、麻友は背中を向けたまま小さく笑って返答する。

「本当に、これがりゅーくんと戻る方法なんだよね。」

「勿論。お互いにりゅーじ君が好きな者同士、彼に関しては嘘は吐かないっす。」

「どうだか。……けど、今は信じてやる。……りゅーくんと早く戻れるなら。」

疑うように言い放った後、玲奈はその場を立ち去った。
気配が無くなり玲奈が居たであろう場所へと麻友は視線を向ける。

「傷だらけになって説得した甲斐があったものだ、まさかここまで忠実に行動してくれるなんて。」

満足そうな笑みを浮かべながら、麻友は帰路へとつきながら小さな声で呟いた。

「あとはゲキカラがりゅーじ君が戻ってる事にいつ気付くか、か。」

■筆者メッセージ
abacusさん
拍手コメントありがとうございました(礼)
実はこういうカラクリだったのです!
陰謀で絡むのは、やっぱりネズミさんですから(笑)
りゅーくんラブな事も忘れちゃ駄目ですよ(笑)

投票下さった方、ありがとうございました(礼)

約束通り更新致します。
ネズミちゃん、やっぱり裏で何かしております。
こらるめんて ( 2015/11/24(火) 23:52 )