§プロローグ§
03
「ふぁぁ…なんかめっちゃ寝てた気するわ…」

自宅で目を覚ましたとある少女は欠伸を1つするて、自らを覚醒させるように大きく伸びをする。
その後ベッドを降りた彼女は、いつものようにリビングえと足を進めた。

「…お母さん、おはよ…」

目を擦りながら母親へと挨拶をするが、陶器の割れる音を聞いて彼女の頭は一気に覚醒をする。

「どうしたん?大丈夫?」

「な、菜々が挨拶を…大丈夫?体調でも悪いん?」

「何言ってんねん!いっつもしてるやん!」

台所にて割れた食器の片付けをしている相手に声を掛けるが、母親から告げられた言葉に彼女はすぐに反論した。

「…そうやね、お母さんが聞いて無かっただけやね…」

「何泣きそうになってんねん。…あ、お母さんウチの制服は?早く準備せんと…」

「制服ならいっつも自分の部屋に持っていってるやん。」

目を潤ませる母親に呆れたように言うが、問い掛けに対して予想外の返事が返ってくると彼女は首を傾げながら部屋へと戻る。

「お母さん!何やねん、この制服!」

自らが全く知らない制服が掛かったハンガーを持ち、彼女は母親が居る台所へと駆け込みながら声を上げた。

「何やねんって、ホンマにどうしたん?激尾古高校の制服は…」

「激尾古高校?ナデ女はどうしたん!?」

「ナデ女?…あんた、ナデ女なんて…夢でも見てたんとちゃうの?」

落ち着かない様子で彼女は必死に訴えるが、母親はおかしそうにくすくすと笑いながら言葉を返す。

「ひょっとして、記憶喪失なったん?」

「記憶喪失なんて…っああっ!」

様子がおかしい娘にやがて心配そうな表情を浮かべるが、然り気無く相手か告げた言葉に彼女は大きな声を上げた。

「どうしたん、急におっきな声出して。」

「思い出した、ウチ激尾古高校やったわ。」

「そうやろ?もー…今日は驚くことばっかりやな。」

母親は驚いたような表情を浮かべるが、落ち着きを取り戻したような娘の発言に小さく笑う。

「こうしちゃおられへん…行ってきます!」

テーブルの上に置いてあったトーストをくわえるようにしてから、彼女は雷に打たれたように自宅を飛び出した。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

「何でウチの記憶残ってるのか知らんけど…みんなおかしなってる…!ナデ女の皆はどうなったんやろ…」

自宅を飛び出した彼女、山田菜々は一緒に過ごしたメンバーを心配するように告げながら足を進めていく。

「激尾古高校…ここやな。」

通行人から案内を受けてようやく目的地に到着すると、辺りを見渡しながら校門をくぐった。

「あっ…ごめんな?」

「てめぇ…どこ見て歩いてんだよ!」

校舎内を進んでいると、偶然通り過ぎる生徒と肩がぶつかる。
菜々の謝罪を耳にする事なくその生徒は殴りかかろうとするが、彼女はあっという間に飛びかってくる相手を床に転がした。

「ホンマに…いちゃもんつけんといてーや。なぁなぁ、山本彩と渡辺美優紀って知らへん?」

「ば…馬鹿だ…こいつ…!」

「なんやねん…急に突っかかってきたり逃げ出したり…」

菜々はしゃがむようにして横になる相手に尋ねるが、その相手は逃げるようによろよろとその場を後にする。
その後ろ姿を見て呆れたように告げると、次の相手を探して校舎内を進んでいった。

「なぁ、山本彩と渡辺美優紀って…」

「ば…馬鹿なのか、アンタ!」

最後まで言い終える前に、尋ねられた生徒はどこか怯えるような表情を浮かべながら逃げ出す。

「もう、ホンマになんやねん!」

まともな返事が得られない事に菜々は苛々した怒鳴り声を上げるが、背後に威圧感を感じた彼女は踵を返してそちらに視線を向けた。

「アンタ、誰か知らへんけど…やたらめったら人の名前呼ぶもんちゃうで。」

「そんな子は…じゃぶじゃぶしやなあかんよな?」

振り返った彼女の瞳には小さく笑う山本彩の姿と、満面の笑みを向ける渡辺美優紀の姿が映る。

「やっぱり記憶、無くなってるんや…けど、根本的には変わってないみたいやし…ちょっと安心したわ。」

彼女達の発言から記憶が無いことを悟るが、以前と大差無い2人の様子に菜々はニヤリと笑みを浮かべた。

こらるめんて ( 2015/10/08(木) 17:18 )