§プロローグ§
02
「やっと昼休みだよー…」

「まぁ授業なんて雰囲気でやってるだけだし、休み時間になった所で安息な訳じゃないんだけどね。あははっ。」

昼休みを迎えて隆治が気を抜いたように告げると、光はくすくすと笑いながら彼の言葉に答える。
その直後に複数の女子生徒から鋭い視線を受けると、光は自らの手で口元を覆った。

「おっと!いけない、いけない。」

「気を付けなきゃ。…というかさ、ずっと光ってその御守り持ってるよね。」

悪戯っぽい笑みを浮かべる光に苦笑いをしながら言うか、彼の鞄に着けている御守りに気付いた隆治はそれを見つめながら問い掛けた。

「あっ…まぁね。大切な…御守りだからさ。」

「なんかおっきいけどさ。…なんか入ってるとかじゃ無いよね?」

光は表情を曇らせながら答えるが、気になった隆治はそれに触れようと手を伸ばす。

「触っちゃ駄目だって!…痛っ…」

相手に触れられまいと光は笑いながら御守りを握りしめるが、その直後に頭を押さえながら言葉をもらした。

「光?…光、大丈夫?」

「あっ…大丈夫、なんか頭痛がしただけだから…」

隆治は相手の様子に申し訳無さそうに尋ねるが、彼は弱々しく笑いながら答える。
その後は完全に食事の手が止まった彼を、隆治は心配そうに見つめた。

「ご馳走さま。…光、もう食べないの…?」

「なんか、食欲無くなっちゃってさ。」

相手から問い掛けられると、光は苦笑いをしてから中途半端なままの弁当を片付ける。

「…やっぱり、なんかさっきから変だよ。保健室は…あー…頼りにならないね。」

「あはは、あの先生は駄目だからね…」

隆治は保健室を勧めようとするが、担当教員に何か思う事があったのかすぐに前言撤回をした。
それに光は弱々しく笑うようにしてから、静かに席を立つ。

「ちょっと、トイレ行ってくる。」

「分かった、気をつけてね。」

彼の言葉を受けてから、光はトイレへと向かった。
目的の場所に到着すると光は個室に入り、先程の御守りを紐を持つようにしながら眺める。

「…隆治くんの言う通り、この御守りに触ってからおかしく…っ…」

先程の事を思い出して御守りをもう1度握りしめると、再度走った頭痛に頭を押さえた。

「本当に、中になんか入ってたり…」

頭痛を堪えながらも御守りの紐をほどき中を覗くと、首を傾げながら中に入っていた小瓶を摘まみ出す。

「瓶?何だろ、この赤い液体…あれ?…手紙…?」

小瓶と同封されていた手紙を取り出して開くと、その書体を見た光は驚きの余り唖然とした。

「僕の字だ…こんなの書いて無いのに…間違いない、僕の字だ…!」

自らの記憶に無い事に戸惑いながらも、彼は書かれている内容をまじまじと見つめる。

「小瓶の液体を飲み干せ、僕を信じて…か。…これが本当に僕の字なら…いつ書いたんだろ…」

手紙の内容に疑問を感じると首を傾げてから、先程取り出した小瓶をじっと眺めた。

「とりあえず、僕を信じてっ…」

意を決したように息を吐くと、目をぎゅっと閉じてから小瓶の中身を一気に飲み干す。

「っげ、血の味が…っ!」

口に広がった血の味に眉を潜めるが、やがて何か異変を感じた彼はその場にしゃがみ込んだ。

「…っははっ…駄目じゃん、誠。しっかり中身まで調べなきゃ…」

光は不敵に笑うようにしながら壁を伝って立ち上がると、彼はニヤニヤとした笑みを浮かべたまま呟く。

「御守りの糸の合間に風間零史の髪を数本仕込んどく…本当に頭痛を誘発してくれたなぁ…プリズンの子で実験した甲斐があったよ。」

自らを落ち着けるように息を吐いてから得意気に告げると、やがて隆治の待つ教室へと戻った。

「あっ、光…ん?光?」

「どうしたのさ、そんな不思議そうな顔して。」

ようやく帰って来た彼の姿を見付けて、隆治は心配そうに声を掛ける。
しかしながら先程とは打って変わった雰囲気の彼に疑問を持ったように言葉を続けると、光は悪戯っぽくくすくすと笑った。

「…なんか、スッキリした顔してるから…」

「あはは、そりゃあトイレに行ったんだからスッキリもするよ。嫌だなぁ。」

「あっ、ごめん…」

冗談めかして告げた光の言葉に隆治は謝罪すると、誤魔化すようにその場を離れる。

「…取り敢えず、使えそうな子探さなきゃなぁ。」

立ち去った彼の背中を見つめるようにしながら、光はこれから先のことを思い悩むように呟いた。

こらるめんて ( 2015/10/08(木) 17:17 )