山本彩 T
ふんふ、ふんふ〜ん♪
陽気に鼻歌を歌いながらシャワーを浴びる。
曲は『365日の紙飛行機』だ。
なにせこれから山本彩が遊びにくるから、ご機嫌の横山由依である。
彩ちゃんはどんな風に舐めてくれるんかなぁ?
ちんこを念入りに洗いながら考える。
自分の家に遊びに来た子はちんこを舐めてくれる、という謎の思考回路の由依である。
ちんちんを〜
しごくより〜
どう舐めたか〜
どこを舐めたの〜か〜♪
最低な替え歌を歌っていると、ドアホンが鳴った。
「彩ちゃん、もう来たんや」
バスルームを出て、タオルでささっと水滴を拭い、ドアホンの受話器を取る。
「彩ちゃん、早かったんやな」
「…………」
「どしたん?」
「……遥香です」
「え!?ぱるる?なんで?」
「来たら悪い」
「わ、悪くないけど、…どしたん?」
「……とりあえず入れてよ」
「うん」
横山家に不穏な空気が流れている。
入室してから無言の島崎遥香にどう対応していいかわからない横山由依である。
先日の島崎家での一件以来、ガン無視されていたのに、突然の訪問である。遥香の意図がわからずに戸惑うのもしかたない。
「……ええと、今日はどしたん?」
「ねぇ、その前に服着たら?」
風呂あがりの由依はバスタオルを巻いただけの状態だった。
「そ、そやな……」
と、立ち上がろうとした由依に対して、遥香が疑問を投げかける。
「ねぇ、なんでシャワー浴びてたの?」
「なんでって……」
これから山本彩が来て、エッチなことしようと思っていたからです。とは言えない由依である。
「まだお昼だよ」
「ええと、昨夜お風呂入らんかったから」
「さっきわたしのこと、彩ちゃんって言ったよね。このあと、さやねぇがくるの?」
「……うん」
「それでシャワー浴びてたの?」
「…………」
まるで浮気がバレて、本妻に詰められているかのようである。
「由依って、誰でもいいんだね」
「そ、そんなことないで!」
「うそ。だって北原さんとしたんでしょ?」
「な、なんもしてへん。ちょっと顔射しただけやし」
「おかしいよ。ちょっと顔射ってなに?そんな日本語ある?」
「だって、ホンマにちょっとだけやもん。里英ちゃん、舐めてくれへんかったし」
「なにそれ?舐めて欲しかったんじゃん!」
口ベタで墓穴ばかり掘る由依は防戦一方である。
しかし、遥香に一方的に責められるうちに、だんだん腹が立ってきた。
なんで、ぱるるにこんな責められんの?
うち悪いことした?
「由依、アレが生えてから、おかしいよ。もっとしっかりしてよ」
「…………ええやん」
「え!?」
「ええやんか!うちがなにしてようと、ぱるるに関係ないやんか!なんでそんな彼女みたいな顔して、うちを責めんねん!」
「だって……」
「ぱるるはすぐ怒るし、あんまエッチなこともしてくれへんやんか。美奈なんてパイずりしてくれたんやで」
「美奈って、みなるん?」
「そうや。美奈はあのでっかいおっぱいで、うちのちんこ挟んでくれたんや。めっちゃ気持ちよかったわ」
「…………」
「ぱるるもやってくれるん?」
「…………」
「せやな。第一、そんなおっぱい大っきない……」
バチンッッ!!
遥香のビンタが見事に由依の頬に炸裂する。
「な、なにすんねん!」
「もう!由依なんて嫌い!!」
「う、うちだって嫌いや!」
由依に嫌いと言われると、遥香は唇を噛みしめて、今度は拳を振り上げた。
グーパンチがヒットする。
由依の股間に。
「…………そ、それは、反則やんか……」
「ふんっ」
くの字に折れる由依を見下ろして、遥香は横山家を出て行った。
悶絶している由依であるが、まあ自業自得である。
さて、島崎遥香と入れ替わるように横山家に訪れた人物がひとり。
「ゆいはん、ドア開いてたで。無用心やんか」
と、入室した山本彩は絶句する。
バスタオル一枚だけの横山由依が股間をおさえてうずくまっているのだから。
「なにがあったん?」
「……さ、彩ちゃん」
と、見上げた由依の頬には、くっきりと紅葉マークが浮かんでいた。