3話
玲奈「着きました。あのベンチに座りませんか?」
やはり何か言いにくいことがある、そう思った和哉は、ベンチに座ると、何を言われても大丈夫なように、心の準備をする。隣に座った玲奈も、何か言いたそうにしているが、中々言い出せずにいる。
玲奈「・・・キスしてください」
和哉「はぁ・・・?」
人気の少ない場所で、生徒会時代の不満を言われるだろうと、覚悟を決めていた和哉だったが、あまりにも予想していなかったことを言われ、一瞬、思考が停止する。
玲奈「キス・・・してくれないんですか?」
和哉「何でそうなるかを説明してくれる?」
玲奈に悪意は無い、そうは思っていても、狙いが分からない和哉は、説明を求める。
玲奈「彼氏とキスしたいって思ったらダメなんですか?」
上目遣いの玲奈が言ったことに納得した和哉は、玲奈を抱き寄せる。
彩「わー!」
和哉・玲奈「・・・・・・・・・!」
二人の唇が触れる寸前、背後から彩が現れ、大声を出し、二人を驚かせる。
彩「二人とも、変なことはせーへんって言うたはずやけどな〜?」
玲奈「いいでしょ、付き合ってるんだから」
振られて不機嫌な彩と、邪魔をされ不機嫌な玲奈。
彩「あ〜〜〜〜!」
玲奈「えっ?」
睨み合う玲奈と彩。和哉はそんなことを気にせず、玲奈の頬に軽くキス。驚く彩と、一瞬のことで何が起きたか分かってない玲奈。
彩「アンタ何してん?」
和哉「彼女にキスして何が悪い」
彩「・・・」
玲奈「・・・・・・」
玲奈のことを彼女と言い、より一層不機嫌になった彩。対照的に彼女と言われ、キスをされた玲奈は放心状態になる。
彩「お腹減った。ご飯行くで!ウチはフレンチかイタリアン食べたい」
和哉「何で日本に戻ってきたのに、そんなの食べないといけないんだよ!俺は和食が食べたいんだ」
三十分間、和哉と彩は何を食べるか言い争う。その間も玲奈は放心状態。
彩「何食べるか、玲奈に決めてもらおか」
和哉「そうだな、言い合うのは時間の無駄だな」
お互いが譲らない言い争いに疲れた彩は、玲奈に決めさせることを提案し、和哉もそれを了解。一先ず不毛な言い争いは終了する。
彩「おーい、玲奈。おーい」
玲奈「あっ、彩。どうし・・・」
彩「あれ?」
彩が頬を軽く叩き呼び掛け、放心状態から回復させるが、一瞬、和哉が視界に入ると、再び放心状態になる。三十分間、何度も同じことを繰り返して、ようやくまともに話せる状態になる。
玲奈「和食とフレンチ?私は和食かな」
彩「何でや?」
玲奈「だって、ヘルシーだし、お肉嫌いなんだもん」
彩「玲奈が肉嫌いなん忘れとったわ」
玲奈と協力して、和哉に三つ星レストランで奢らせようとした彩の目論見は崩れ去る。
彩「しゃーない、料亭にでも行こか」
和哉「何で料亭だよ、普通に食堂とかでいいだろ」
家庭的な物を食べたい和哉と、高い物を奢らせようとする彩。二人の言い争いは再開し、更に時間が経過。
玲奈「もう、こんな時間だから、どっちも無理じゃない?」
和哉・彩「・・・・・・」
不毛な言い争いを続けた結果
彩「結局ここか・・・」
二十四時間営業のファミレスで夕飯を食べることになる。