4章
4話
 彩達が無理矢理入ると、席にかなり余裕があった。

彩「こんなに空いてんのに、何で満席って、嘘言うたん?」

和哉「私一人でやってるので、三組のお客様をおもてなしするのが、限界なもので」

杏奈「先輩かわいそう」

由紀「ダーリン、私が手伝ってあげる」

未姫「奈々、何でお兄さんを手伝ってあげないの?」

 生徒会の模擬店、執事喫茶でありながら、和哉一人でやっていると知られると、和哉に対して同情が集まる。

和哉「ご注文は何にされますか?」

 三組に水を運び、注文を受ける。メニューは彩達が作ったレストランのコースみたいなものから、軽食・スイーツをメインにした物に変えていた。

彩「うちらにも水、くれませんか?」

和哉「ケーキセットですね、かしこまりました」

 彩を無視して、カーテンで仕切られた奥の調理場でケーキセットを用意。

和哉「お待たせいたしました」

玲奈「お水貰えますか?」

 三組にケーキセットを運ぶと、玲奈の声が聞こえない振りをし、その場に立つ。

奈々「お水ください」

和哉「・・・・・・・・・」

未姫「お兄さん、奈々が呼んでますよ」

 未姫に言われ、初めて気付いたように、玲奈達の席に行く。

和哉「お忙しい生徒会の皆様、如何なされましたか?」

彩「さっきから水が欲しいって呼んでたやん」

和哉「あ、私を呼ばれてたのですか?幻聴かと思ってました。かしこまりました、少々お待ちください」

 調理場に戻り、紙を持ってすぐに戻ってくる。

彩「なぁ、これなんや?」

和哉「もしかして読めないのですか?『水』ですよ」

彩「読めるわ、ボケ!ちょっと字上手いんがムカつく。そうやなくて、何でこんなん持ってきたんや?」

和哉「水が欲しいと仰ったので、水と書いてお持ちしたのですが」

彩「うちらが欲しいんはウォーターやウォーター」

和哉「かしこまりました」

 再び和哉は調理場に戻る。

玲奈「会長、水持ってきてくれるかな?」

彩「今度は持ってきてくれるやろ」

 玲奈と彩はこれ以上和哉がふざけないと思っていたが

和哉「お待たせいたしました、ウォーターです」

彩「また、同じボケやるとは思わんかった」

 和哉は片仮名で『ウォーター』と書いた半紙をもってくる。

和哉「お気に召しませんか?では、こちらは如何でしょうか?」

彩「英語にしたらエエんとちゃうわ!」

 予め用意していたのか、今度は『water』と書いた半紙を見せる。

COM ( 2015/10/18(日) 18:51 )