6話
玲奈「ホントに惚れてない?」
彩「も〜しつこいで!ウチはあんな不真面目なんは嫌いや」
「和哉君が不真面目?」
彩「せやかて生徒会の仕事、全部ウチらに丸投げやし、授業中はずっと寝てるし。で、ちょっと真面目にやったら、おいしいとこ全部持っていくし!」
彩は和哉への不満をドンドン言っていく。
「君達、もしかして生徒会の子?」
玲奈「そうですけど・・・」
「私のアドバイスのせいで苦労させて、ごめんね」
教授に謝られた玲奈達は、首を傾げる。三人には謝られる理由など全くない。
奈々「どういうことですか?」
「前に和哉君に相談されたことがあってね。どうすれば周りから頼りにされないかってね」
玲奈「それで何て?」
「やる気を出さない、適当にする、ふざける、できるだけ影を薄くする、だよ」
教授のアドバイスは、まさに今の和哉の姿。尤も和哉の影が薄かったのは、生徒会長になるまで。
彩「いつも眠そうなんもアドバイスしたからなんですか?」
「それは私と明け方近くまで話してるから・・・かな。和哉君と話すと、良いアイデア出してくれるんだよ」
彩「要するに、全部この人のせいってことやん」
彩の一言で玲奈は教授を睨み付ける。
「私もそろそろ仕事するかな」
奈々「お邪魔して、すいません」
玲奈の睨みが相当怖かったのか、教授は逃げるように研究室に入っていく。和哉が誰かとデートしているのではない、と分かり、玲奈達は近くの喫茶店に入る。
玲奈「奈々ちゃん、前から聞きたかったんだけど、中学の時の会長って、どういう人だったの?」
奈々「真面目でみんなに優しくて、尊敬できる自慢のお兄ちゃんでした」
彩「今の反対やん」
奈々「私だけじゃなくて、杏奈ちゃんも・・・みんな、お兄ちゃんのこと・・・」
杏奈の名前が出ると、彩の表情はひきつる。未だに『おばさん』と言われたことを怒っているようだった。
玲奈「そう言えば、何で頼りにされたくないのかな?普通は頼りにされたいだよね?」
奈々「それは・・・潤さんから聞いたんですが、中学の卒業式の後に 『困った振りをすれば助けてくれる先輩がいなくなって困る』っていうのを偶然聞いたみたいで・・・ 」
彩「何でもかんでも助けたらエエわけないやん。そんなことわからんのやったら、やっぱりアホやな」
和哉のことをアホと言いながらも、彩の表情は少し優しくなっていた。僅かながら和哉のことを知ったからだろうか。