3章
6話
玲奈「ホントに惚れてない?」

彩「も〜しつこいで!ウチはあんな不真面目なんは嫌いや」

「和哉君が不真面目?」

彩「せやかて生徒会の仕事、全部ウチらに丸投げやし、授業中はずっと寝てるし。で、ちょっと真面目にやったら、おいしいとこ全部持っていくし!」

 彩は和哉への不満をドンドン言っていく。

「君達、もしかして生徒会の子?」

玲奈「そうですけど・・・」

「私のアドバイスのせいで苦労させて、ごめんね」

 教授に謝られた玲奈達は、首を傾げる。三人には謝られる理由など全くない。

奈々「どういうことですか?」

「前に和哉君に相談されたことがあってね。どうすれば周りから頼りにされないかってね」

玲奈「それで何て?」

「やる気を出さない、適当にする、ふざける、できるだけ影を薄くする、だよ」

 教授のアドバイスは、まさに今の和哉の姿。尤も和哉の影が薄かったのは、生徒会長になるまで。

彩「いつも眠そうなんもアドバイスしたからなんですか?」

「それは私と明け方近くまで話してるから・・・かな。和哉君と話すと、良いアイデア出してくれるんだよ」

彩「要するに、全部この人のせいってことやん」

 彩の一言で玲奈は教授を睨み付ける。

「私もそろそろ仕事するかな」

奈々「お邪魔して、すいません」

 玲奈の睨みが相当怖かったのか、教授は逃げるように研究室に入っていく。和哉が誰かとデートしているのではない、と分かり、玲奈達は近くの喫茶店に入る。

玲奈「奈々ちゃん、前から聞きたかったんだけど、中学の時の会長って、どういう人だったの?」

奈々「真面目でみんなに優しくて、尊敬できる自慢のお兄ちゃんでした」

彩「今の反対やん」

奈々「私だけじゃなくて、杏奈ちゃんも・・・みんな、お兄ちゃんのこと・・・」

 杏奈の名前が出ると、彩の表情はひきつる。未だに『おばさん』と言われたことを怒っているようだった。

玲奈「そう言えば、何で頼りにされたくないのかな?普通は頼りにされたいだよね?」

奈々「それは・・・潤さんから聞いたんですが、中学の卒業式の後に 『困った振りをすれば助けてくれる先輩がいなくなって困る』っていうのを偶然聞いたみたいで・・・ 」

彩「何でもかんでも助けたらエエわけないやん。そんなことわからんのやったら、やっぱりアホやな」

 和哉のことをアホと言いながらも、彩の表情は少し優しくなっていた。僅かながら和哉のことを知ったからだろうか。

COM ( 2015/10/12(月) 21:56 )